石垣島の台湾移民一家の三世代にわたる人生に光を当てることで、戦前から戦後に渡る変動の歴史に翻弄されながらも生き抜いてきた移民家族の「家族愛」や彼らの国境・世代を越えたアイデンティティと向き合った、黄インイク監督のドキュメンタリー映画『海の彼方』。8/12より公開が始まった『海の彼方』に続き、沖縄・八重山ドキュメンタリーシリーズ第二弾として、西表島の炭鉱をテーマとする次回作『緑の牢獄』が制作進行中です。
本作は、多くの人々に歴史の断片を体感してもらいたいという思いから、ドキュメンタリー映像に劇映像を加えた歴史再現映画を目指しています。 この度、製作費を募るためのクラウドファンディングをスタートさせました。

クラウドファンディングサイトMotion Gallery『緑の牢獄』制作支援プロジェクト
https://motion-gallery.net/projects/greenjail

【沖縄・八重山ドキュメンタリー三部作:「狂山之海」プロジェクトについて】
『 狂山之海 (くるいやまのうみ) 』は、「八重山の台湾移民」をシリーズ的に描くドキュメンタリー映画三部作です(『海の彼方』、『緑の牢獄』、『両方世界』)。台湾人監督の黄インイクが、2013年にスタートさせました。『狂山之海』三部作に関する詳細は、以下の公式サイトをご覧ください。
▶「狂山之海」ウェブサイトwww.yaeyamatrilogy.com

【黄インイク監督からのコメント】
数年前から、私は西表島の橋間おばあの所へ通い、彼女の声に耳を傾けてきました。彼女が歩んできた人生の背後には、日本と台湾の複雑な歴史のたくさんの問題が見えます。失われつつある過去の記憶を、いま記録する必要があると感じました。この歴史の断片を多くの人に知ってほしいと思います。

【西表炭坑研究者・三木健氏からの応援コメント】
‐台湾からの解明に期待‐
西表炭坑は日本の最南端の炭鉱だ。それはもっとも台湾に近い炭鉱を意味している。台湾北部の炭鉱地帯からは、台湾人坑夫たちが海を渡り、採炭に従事したが、その労働は過酷を極めた。坑夫たちは「モフィー」(麻薬)でしばりつけられ「緑の牢獄」から抜け出すことはできなかった。 黄インイク監督は、こうした闇に光を当て「緑の牢獄」の一端を垣間見せてくれよう。地下鉱脈の繋がった台湾からの解明に期待したい。

<『緑の牢獄』について>

緑のジャングルを搔き分けて進んでいくと、
廃墟となった炭鉱とそこに埋もれた人生の記憶があった――

沖縄県西表島、白浜集落に住む橋間おばあは、「緑の牢獄」での悲痛な物語を伝える数少ない一人である。戦前、台湾人などの植民地労働者が西表炭鉱に連れて来られ、過酷な労働環境のもとで働かされていた。この炭鉱は密林に囲まれ、その彼方には大海原が続く。坑夫たちにとってそれはあたかも自然の牢獄に等しかった。
橋間おばあは、台湾から坑夫たちを募集して、炭鉱で働かす仕事をしていた楊氏の娘である。彼女は当時11歳の時に、「 童養媳(トンヤンシー、一種の売買婚)」として、台湾から西表島に渡った。92歳になった橋間おばあの人生を顧みれば、そこに幸福が訪れたことはあっただろうか。「童養媳」として、「炭鉱の子」として、彼女の人生はずっとこの島に囚われてきた。今はたった一人で暮らしている。子供たちは、上京したのち行方不明となる者、出稼ぎに行った土地で病いで倒れる者、他の子供たちもこの島とは疎遠になった。人生最後の時は近づき、彼女は自分自身の人生にもう一度問いかける。
本作品は、これまであまり知られていない西表島の人々の生活や炭鉱の歴史を日本・台湾・世界に向けて発信していきたいと思っています。ドキュメンタリー映像だけでは伝えることのできない当時の雰囲気を劇映画で再現し、できるだけ多くの人に届けたいのです。この思いに共感していただける方からのご支援・ご協力をお待ちしています。

<黄インイク監督プロフィール>

台湾・台東市生まれ。現在28歳。台湾政治大学テレビ放送学科卒業後、東京造形大学大学院映画学部へ。在学中、映画評論や研究文章を発表し、台北映画祭の特集文字作成などにも参加する。2014年、河瀬直美がプロデュースした奈良国際映画祭とスイスジュネーブ芸術大学の共同映画制作プロジェクト「Grand Voyage:壮大な航海」に参加。2015年、映画製作会社「木林映画」を台湾に設立。戦前からの台湾移民や殖民関係などをテーマにドキュメンタリー映画を制作。2016年、『海の彼方』が台湾で劇場公開し、台北映画祭や大阪アジアン映画祭、ハワイ国際映画祭などへ選出される。