近浦啓監督 短編映画『SIGNATURE(シグネチャー)』が、ロカルノ国際映画祭へのノミネートに続き、9 月 7 日より開催のトロント国際映画祭 短編部門に選出され北米プレミアを行うことが発表された。この短編映画は、企画中の長編映画のパイロット版として製作されたもので、同一主人公による前日譚となっている。そして、いよいよその長編映画『CHENG LIANG(チェン・リャン)』の製作が決定した。

近浦啓監督 初の劇場長編映画となる本作は、デビュー作『孔雀 —我が家の風景—』(第 55 回 べルリン国際映画祭 銀熊賞受賞)で圧倒的な存在感を見せ、その後も数多くの中国の作家映画に出演し国際的な評価を確立している中国人俳優 ルー・ユーライ、そして、北野武監督『龍三と七人の子分たち』主演、河瀬直美監督『光』出演など、日本映画界が誇る俳優 藤竜也が主演する。また、藤竜也演じる蕎麦職人の娘を、演劇界で活躍している松本紀保が演じることも決定(本格的な映画出演は初)。

そして、撮影監督には名だたる監督から絶大な信頼を寄せられている山崎裕(是枝裕和監督『誰も知らない』『海よりもまだ深く』、河瀬直美監督『2つ目の窓』)、美術監督には昨年紫綬褒章を受章した部谷京子(周防正行監督『Shallwe ダンス?』『それでもボクはやってない』、滝田洋二郎監督『天地明察』、河瀬直美監督『あん』)が決定。

日本側のプロデューサーは近浦啓監督本人が務める。また、中国側のプロデューサーには、ロウ・イエ監督の全作品のプロデュースを務めてきた中国人プロデューサーであるナイ・アン、そして、近浦啓監督と親交の深い映画作家 フー・ウェイ(イザベル・ユペール出演の短編映画『Ce qui nous éloigne』、2014 年米アカデミー賞短編実写部門ノミネート『Butter Lamp』などを監督)。
日中の豪華キャスト・スタッフが集結する本作は、8 月中旬に山形県大石田町にてクランクイン。
他、山形市内、東京近郊、中国河南省で撮影。
公開は、2018 年秋の予定。

【キャストのコメント】
■ルー・ユーライ
昨年 5 月末に、長編映画のキャスティングのために北京に来ていた近浦啓監督と会いました。
僕と会って、少しだけ話すと監督は言いました。「来年長編映画を撮るので是非出演してもらいたい。そしてその前に東京で一緒に短編映画を撮ろう。」
そしてその直後の 6 月、僕は本当に東京に招かれ、短編映画『SIGNATURE』を撮影しました。あれから一年。あっという間でしたが、本当に長編映画『CHENG LIANG』の製作が実現しました。クランクインも間近に迫っています。さすが近浦監督の行動力です!監督は、本当にやりたいことなら夜も寝ずに何でもすぐにやってしまいます。本当に仕事の虫ですね!

監督がこのキャラクターを作ってくれたことを心から感謝しております。このキャラクターのおかげで、僕は日本の優秀な映画人の方々と一緒に映画を作ることができるからです。この撮影が始まるのをとても楽しみにしています。藤竜也さんの出演された作品は、大学時代に映画を学ぶための「教科書」でした。常に藤さんの演技に感銘を受けてきましたので、共演できることは本当に夢のようなことだと感じています。
そして撮影監督の山崎裕さんが撮影された作品もこれまでにたくさん拝見しました。山崎さんが今でも自分でカメラを持ち撮影しているということを近浦監督から伺い、心打たれました。山崎さんを失望させないよう精一杯頑張りたいと思っています。
その他にもたくさんの日本の優秀な映画人がこの映画『CHENG LIANG』のために集まってくれました。それは、やはり皆、この映画が語るストーリーが好きだからなのだと思います。近浦監督を信じて、私たちを信じて、一緒に良い映画作品『Cheng Liang』を完成させるように頑張ります!

■藤竜也
近浦監督の短編映画『SIGNATURE』を観ました。日本で働く中国の青年と、彼が関わる世界をドキュメンタリックに描いている作品でした。
パワフルで存在感のある作品でした。チェン・リャンを演じたルー・ユーライさんの切ない風情に胸を打たれました。
あのチェン・リャンのその後の話が長編映画になるという。そしてなんと、その近浦さんの初の長編映画となる『CHENG LIANG』から出演オファーをいただいた。
嬉しかったですね。2013 年の近浦作品 短編映画『Empty House』以来でした。
経済のグローバル化にともない、地域の国々は、さまざまな問題を共有し補完しあって進んでいかなければいけない運命共同体のようなものになっているように思えます。
そういった視点からみると、映画『CHENG LIANG』が突きつける世界は観客の心を揺すると思いますね。
私の役はチェン・リャンが深くかかわる蕎麦屋の親父です。職人です。まずは蕎麦をキチンと打てるようにならないといけません。そこを押さえればあとは大丈夫。
近浦チームの一員として、今年も映画に関われる感謝を忘れずに『CHENG LIANG』での役を務めます。

■松本紀保
今回、映画『CHENG LIANG』のお話を頂き、大変嬉しく思っております。
本格的な映画のお仕事は初めてで緊張しつつも藤竜也さんはじめ、新しい出会いに撮影の日を心待ちにしております。
近浦監督とお話したとき、穏やかな語り口でありながらにこの映画にかける熱い想いを感じました。
国籍、そして言葉を超えて人が出会い心を通わせていく旅路の物語の『架け橋』となれるように努めたく思います。

【スタッフのコメント】
■撮影監督 山崎裕
近浦監督から映画『CHENG LIANG』のお話しを頂いた。監督とは、私が撮影を担当した映画 Narrative 2016『東の狼』(P/河瀬直美、D/カルロス・M・キンテラ)が昨年9月奈良国際映画祭でワールドプレミアされた際のレセプションで、主演の藤竜也さんに紹介して頂き、会っていた。
今回は中国からの研修生の若者に焦点を合わせた作品だ。
研修生制度を利用してアジアやアフリカから、多くの若者たちが日本に来ているが、彼らは様々な問題を抱えている。
私自身もこの状況に興味を持っていたし、ドキュメンタリーの撮影経験も活かせるとも思い、是非参加したいと思った。主演が中国のルー・ユーライさんと藤竜也さんというのも魅力的だ。
日本と中国から、アジアへ、そして世界へ、と拡がる作品になれば嬉しい。

■美術監督 部谷京子
近浦啓監督『CHENG LIANG』のオファーを頂いた。中国人実習生の話だという。心が騒いだ。
実は親の住む瀬戸内海の小さな島で中国人実習生による凄惨な事件が昨年起きていた。瞬時にこの犯人と主人公が重なった。
近浦監督とお会いしてパイロット版とも呼ぶべき短編映画『SIGNATURE』を観た。
映し出される切ない表情。
しかし、そこには生きることと戦う確かな姿勢があった。そして美しい映像。
この映画をやりたい!と心から思った。
今私は山形県で蕎麦屋を作っている。主人公の勤務先で店の主人は藤竜也さんだ。地域の方々に支えられながらの作業。本番の撮影が待ち遠しくてならない。
撮影のある日本、中国を超えて世界に飛び出す作品になってほしいと心から願う。

<短編映画「SIGNATURE」参考リンク>
▼“SIGNATURE” Trailer
▼“SIGNATURE” 公式サイト

関連作品

http://data.cinematopics.com/?p=58451