「さよなら歌舞伎町」「ヴァイブレータ」など、自分の居場所を探し求める大人たちの衝突や愛を、時に鋭く時に温かく描いてきた廣木隆一監督。どうしても描きたかったという自身の処女小説の映画化であり、文芸作品の映像化に定評がある廣木監督の真骨頂ともいえる新作映画『彼女の人生は間違いじゃない』。

廣木隆一監督からコメントが到着。

<監督コメント>
 『RIVER』(12)で今の東北(被災地)の姿を入れたいという想いに駆られ、東北に行った。でも、撮影はしたものの心の整理がつかなかったんです。自分がどんな感情なのか。じゃあ、小説に書いてみようかなと思ったのがきっかけでした。
小説が完成し、映画化することになりロケハンで5年ぶりにいわき市を訪れ、平坦なまま放置されている土地を見て、人の心も上っ面だけ地ならししているのかと、ショックを受けました。5年前とは全く違う風景で、自分の小説に縛られず、今の姿を描かねばと気持ちを引き締めました。
映画を撮るということのスタンスは変わらず、題材と向き合うことも今まで通りにそう違っていませんでした。ただ、クランクインしてからは、「なぜ俺はここにいるのか」と、自身に問いかけられる日々が続いたことは違っていたように思えます。撮りたかったのは、現在の日常です。何かが欠落したまま、決して満たされることのない日々の暮らしを撮影することで、福島だけでなく今の日本が抱えている矛盾を描きたいと思いました。
どこにいても、満たされて生きている人なんて、実はそんなに多くはいない。人生には様々な矛盾がある。この映画を観て、何かを感じてもらえればうれしいです。

<監督プロフィール>
1954年、福島県郡山市出身。
『性虐!女を暴く』で映画監督デビュー。主にピンク映画を手がける。米サンダンス・インスティテュートに留学し、帰国後に発表した『800 TWO LAP RUNNERS』(94)で文化庁優秀映画賞を受賞。その後、03年『ヴァイブレータ』で、第25回ヨコハマ映画祭の監督賞など数多くの賞を受賞。近年は『余命1ヶ月の花嫁』(09)、『きいろいゾウ』(13)、『娚の一生』(15)、『ストロボエッジ』(15)、『おおかみ少女と黒王子』(16)、『PとJK』(17)など、若手アイドル俳優を主演に迎え、確かな演出力でメジャー規模の青春感動作を手がける一方、『M』(07)、『軽蔑』(11)、『さよなら歌舞伎町』(14)など男女の情愛をテーマにした作品も並行して発表している。本作は、自身の故郷である福島を舞台にした処女小説を原作としている。

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