『タイタニック』『アバタ―』で数々の記録を塗り替えたジェームズ・キャメロン監督の代表作であり、アーノルド・シュワルツェネッガーの人気を不動なものにした『ターミネーター2』が最先端の3D技術で新たに『ターミネーター2 3D』 として、8月11日(金・祝)より全国ロードショーが決定しました。

『ターミネーター』の特殊効果で脚光を浴び、『エイリアン2』(1986)、『プレデタ―』(1987)でアカデミー賞視覚効果賞を受賞し、ハリウッドの特殊効果の第一人者として不動の地位を築いたスタン・ウィンストンが没し、今年で9年を迎えます。今回、映画雑誌「FLIX」の編集長、松下元綱さんにスタン・ウィンストンの思い出を語っていただきました。

1984年、第一作目『ターミネーター』が封切られ、メイキング本の取材のため、当時、学生だった松下さんが、現地のライターのアシスタントとして、スタン・ウィンストンの工房を訪ねました。スタン・ウィンストンの印象を松下さんは「メイクアップアーチストとしての面とビジネスマンとしての両方を兼ね備えている人、当時から若い才能を起用して、プロデューサー的な側面もあった」と語りました。映画で使われた上半身のサイボーグのモデルを見せてもらいましたが、機械で動くのではなく、「二つの棒で人が動かしているのでびっくりした」人形のコマ撮りや特殊メイクといったアナログ感覚の創意工夫であの名作を作り上げたという印象を強く持ったそうです。「リック・ベイカーのようなアーティストぽくはなく、フランクな感じの人だった。テクニカルな話ではなく、何故、この技術がこの場面で必要なのか、丁寧に答えてくれた」「現在のCG全盛時代と違い、80年代の特殊効果は手作り感覚が強いけど、すごくクォリティーの高いものを作っていた」と、当時を振り返って語りました。実物のターミネーターのメイクを見て、「緻密に作っていなく、安っぽい作りなんだけど、ライティングなどの技術で本物ぽく見せていた」と感じたそうです。当時のジェームズ・キャメロン監督は、低予算の映画作りをしていて、「今のような巨匠になるとは思っていなかった」『ターミネーター2』はCGを本格的に導入した作品というイメージが強いですが、「当時はCGでできることは限られていて。スタン・ウィンストンは顔や体のキズや穴を作った。いまならすべてCGを使うだろうが、当時は実際に手で作ったんだ、頭が真っ二つに割れるのもね。CGショットは全体で42しかない。ほとんどゼロだね!『アバター』では2800もあったんだから。」(ジェイムズ・キャメロン談)近年、特殊メイクのリック・ベイカーが、引退を表明し、80年代の職人的な技術をもったアーティストが、CGにその座を渡し、現役を退いています。『ターミネーター2』はスタン・ウィンストンの職人的な技術と当時、新しい技術として注目されつつあったCG技術が、組み合わされ、その後の特殊効果の歴史を変えた分岐点的な作品と言えるでしょう。『ターミネーター2 3D』は現在の3D技術と80年代全盛だったプラクティカルエフェクト(特殊メイクやアニマトロニクスなどの特殊効果)の見事な融合作として、この夏公開されます。

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