マーレン・アデ監督最新作『ありがとう、トニ・エルドマン』が6月24日(土)よりシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国順次公開となります。

各国の有力誌がこぞって2016年の映画ベスト1に選んだのは、『ムーンライト』『ラ・ラ・ランド』『メッセージ』ではなく、『ありがとう、トニ・エルドマン』だった。
ワールドプレミアとなったカンヌ国際映画祭で大きな話題となると、アカデミー賞ノミネートをはじめ各国で40を超える賞を受賞。
既に公開されたドイツ、フランスでは異例の大ヒットを記録。また、アメリカ公開の際に本作を観て惚れ込んだジャック・ニコルソンの猛プッシュにより、自身を主演に据えたハリウッド・リメイクが決定するなど、公開を前に話題が沸騰している!

互いに思い合っているにも関わらず、今ひとつ噛み合わない父と娘の普遍的な関係を、温かさとクールな視点をあわせ持った絶妙のユーモアで描いた本作。
冗談好きの父・ヴィンフリートと、故郷を離れ外国で仕事をする娘・イネス。仕事一筋で笑顔を忘れかけている娘を心配し、父は、出っ歯の入れ歯とカツラを装着し<トニ・エルドマン>という別人になって、神出鬼没に娘のもとに現れる…。

入歯にカツラの主人公やブルガリアの精霊”クケリ”など、観ているだけでもインパクトがあるものがたくさん登場する本作だが、物語に合わせて流れる音楽も注目。

物語も終盤、険悪な雰囲気を漂わせながら車に同乗する父ヴィンフリートと娘イネスはあるお宅を訪問する。
そこでヴィンフリートは今日のお礼に、とオルガンに向かって演奏をし始める。最初は戸惑いながらも、意を決したようにオルガンの伴奏に合わせてイネスが歌う歌は、ホイットニー・ヒューストン代表曲の「GREATEST LOVE OF ALL」。
劇中の山場と言っても過言ではない、イネスが胸に詰まった感情を爆発させて、観ている側も号泣すること間違いなしの名場面である。

「――あなたが夢見ていた場所が さみしい場所になってしまったら 愛があなたを力づけてくれる」

この名曲は、惜しまれつつ5年前に他界したホイットニー・ヒューストンが、生前最も大事にしていた曲だという。
元々はミュージシャンのジョージ・ベンソンが映画の挿入歌として最初に唄った曲だが、ホイットニー・ヒューストンが1985年に初めて発表したアルバム「Whitney Houston」(邦題:そよ風の贈りもの)の中に挿入されたその曲が、世界中で広まった。
そしてBillboardチャートでは「GREATEST LOVE OF ALL」を含め3曲が1位を獲得するという大ヒットを記録。

ゴスペル歌手だった母親の影響を受けて幼少期からゴスペルを習っていたホイットニー。
常々母親から「どんな時も自分に対して誇りを持って生きなさい」と言い聞かされてきた。その母から、歌手デビューが決まった際に「この曲を自分のものとして歌えるようになったら一人前」と言われ励まされたそう。
その後、世界中を感動に包む唯一無二の人気を誇る歌手に成長しても、母親に励まされ歌った この曲をいつまでも大事にしていたという。

一見するとこの曲は愛する人へのラヴソングともとれるけれど、本来表現しているのは自分への最大の賛辞であり、誇りをもって生きる自分を心から愛する歌なのである。『ありがとう、トニ・エルドマン』では父ヴィンフリートがこの曲を娘に歌わせるために伴奏する。

仕事に必死になりすぎて疲れて泣いて自分を見失いかけているイネスに対し、度々突拍子もなく悪ふざけをふっかけるヴィンフリートだが、この歌を歌わせることでイネスにこの歌詞の意味に気づいてほしいと願いをかけるような名シーンは必見。

その他にも本作ではたくさんの曲が劇中で使用されている。
日本の音楽界に多大な影響を与え、今なジャンルを超えて活動の幅を広げるイギリスのロックバンド ザ・キュアが1989年に発表し空前の大ヒットを記録したアルバム「Disintegration」の一曲目「plainsong」。
今日本の若者たちからも大人気のDJ アヴィーチーのヒット曲「Wake Me Up!」や、エレクトロ・ロックの新星 キャピタル・シティの代表曲「Safe and Sound」はリミックスされて登場する。

ドイツ映画だからと言ってその国の色に富んだ選曲とは限らない。
世界中が笑って泣いて、大ヒットを記録した一因は、世代を超えて愛され続ける曲や、最新のヒット曲などを散りばめた、世界中の“良いとこ取り”の選曲をしたことにもある。

6月24日(土)よりシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!
(C)Komplizen Film

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