ワルシャワ蜂起など史実に材を取った作品を撮り続け、レジスタンスの体験を基にした『世代』(54)、対ソ連の地下抵抗運動を描いた『地下水道』(56)、第2次大戦前後のポーランド社会の流転を描いた『灰とダイヤモンド』(58)など、「抵抗3部作」で国際的な評価を獲得。カンヌ国際映画祭で1981年最高賞パルムドールを受賞し、2000年に米アカデミー賞名誉賞を受賞したポーランド映画の巨匠アンジェイ・ワイダ監督の最新作であり、遺作となった『残像』が6月10日(土)、岩波ホールほかにて公開する運びとなりました。

遺作である本作に、セルフポートレートで知られる美術家・森村泰昌やワイダを輩出したポーランド国立映画大学で学んだ『愚行録』監督・石川慶、『FAKE』の森達也監督、ジャーナリストの鳥越俊太郎など、多方面から絶賛のコメントが寄せられました。
人はそれでもなお、信念を貫けるのか。
ワイダ監督最後のメッセージは現代に警鐘をならす!

「抵抗三部作」で国際的な評価を獲得し、パルムドールやアカデミー賞名誉賞を受賞しているポーランド映画の巨匠アンジェイ・ワイダ監督の最新作であり遺作となった本作。第二次世界大戦下のスターリンによる全体主義に脅かされながらも情熱的に創作と美術教育に打ち込む前衛画家、ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキ(1893~1952)の晩年の4年間に焦点を当て、政治体制に決して屈することのない芸術家の姿、芸術の役割を鮮烈に描いている。そんなワイダ監督の最後のメッセージに対して「いまの日本社会にも強い警鐘を鳴らしている」「ワイダは今の世界に突き付ける」「現代に焼きつく鮮明な残像」といった絶賛のコメントが寄せられた。

■鳥越俊太郎(ジャーナリスト)
アンジェイ・ワイダはスターリン主義の非人間性を暴きたかったのか?
暴力的な社会主義に静かに抵抗する前衛芸術家の気高さを描きたかったのか?
この映画を見終わった率直な印象は、両方だ!に尽きる。

■上野千鶴子(学者)
「暗い時代」を生きたワイダ生涯最後のメッセージ。わたしたちは再び「暗い時代」へと向かうのだろうか…。

■ピーター・バラカン(ブロードキャスター)
国家体制によって潰される一人の芸術家。
その抑制された素晴らしい演技をはじめ、脚本、撮影、時代考証などの面でも力作です。

■安田菜津紀(フォトジャーナリスト)
抗うほどに孤立を深めた、一人の芸術家の魂の軌跡。消え入るような闘いの灯は時を超え、鮮烈な光としてここに蘇っていた。

■ 佐々木俊尚(作家・ジャーナリスト)
どんなイデオロギーであろうが、過度な正義はつねに危険であり、政治にすべてを集約させようとすることは多様性を殺す。本作の問いかけは、いまの日本社会にも強い警鐘を鳴らしている。

■大谷昭宏(ジャーナリスト)
ワイダ監督最期のメッセージは、かつて世界が歩んだ道の残像なのか。
それとも、この先に待ち構えている世界の投影なのか。

■増田ユリヤ(ジャーナリスト)
「歴史の中で風が吹いてもやがて収まる」ならば、止まない風の中で逝った人々の思いを、私たちが受け止めよう

■石川慶(映画監督)
ワイダ監督は最後まで闘う人を描き切った。その偉大な残像を、僕はずっと忘れないだろう。

■森達也(映画監督)
決して絵空事ではない。時代に抗する。組織に同化しない。その意味をワイダは今の世界に突き付ける。

“Powidoki” rez. Andrzej Wajda Zdjecia: Pawel Edelman fotosy: Anna Wloch www.annawloch.com anna@annawloch.com

■池内紀(ドイツ文学者・エッセイスト)
国家権力が一寸刻みに芸術家の、そして人間としての存在を消していく。
一度メカニズムが成立すると、誰にもどうにもできない。

■森村泰昌(美術家)
残像とは、憶い出された過去の懐かしい映像のことではない。それは、かつてあった不幸な歴史が、形を変えて現代に再び悪霊のように浮かび上がってくる様を指す。そういう意味で、アンジェイ・ワイダの最後の映画は、まぎれもなく、現代に焼きつく鮮明な残像だと言えるだろう。

■ろくでなし子(マン画家・造形作家)
芸術が国に規制されることの愚かしさと残酷さ。
わたしがお世話になった警察、検察、裁判官に是非観てほしいマン題作(問題作)です。

■宇都宮健児(弁護士、元日本弁護士連合会会長)
社会全体が一定の方向になびき国家による迫害が強まる絶望的状況の中で、人間としての誇りと尊厳を失わない主人公の生き方に感動。

映画『残像』は6/10(土)、岩波ホールほか全国順次ロードショー。

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