―芸術は爆発だったりすることもあるのだが、僕の場合、お母さんが爆発だった―

幼少期に「実母が隣家の息子とダイナマイト心中」という驚愕の体験をした少年「末井 昭」。高校を卒業と同時に工場に就職したあと、上京してグラフィックデザイナー目指す。ひょんなことからエロ雑誌業界の世界に入り込んでしまい、やがて写真家・荒木経惟とのコンビで80年代を席巻した伝説のエロ雑誌「ウィークエンド・スーパー」「写真時代」などの名編集長となってゆく、そして――。
末井 昭氏が、自身の半生を書き1982年に刊行され、その後2度に渡り文庫化され永らく愛されてきた名エッセイ「素敵なダイナマイトスキャンダル」が、ついに映画化、2018年春に公開が決定した。
本作の監督と脚本を務めるのは、冨永昌敬 監督(41)。長らく映画化を熱望していた表題作「素敵なダイナマイトスキャンダル」に加え、末井氏の関連著作や談話をもとに稿を重ね、「昭和のエロ&サブカルチャーのカリスマ」の青春をダイナミックなドラマに落とし込んだ。
そして、「末井 昭」を演じるのは、昨年、映画・テレビで顕著な活躍をした俳優を選出する「2016年エランドール賞」を授賞し、現在大ヒット公開中の『追憶』(降旗康男監督)、9月には百鬼オペラ「羅生門」が控えるなど、映画、舞台と幅広く活躍する俳優・柄本 佑(30)。
さらに本作の音楽には近年「機動戦士ガンダム サンダーボルト」のサントラなども手掛け、映画批評も多数手掛けるジャズ界のカリスマ菊地成孔が担当する。
撮影は3~4月都内近郊にて行われ、すでにクランクアップ。現在編集中で完成は7月を予定している。
また映画化決定にあたって、1982年に刊行された原作の4度目の復刊が5/26(金)に決定し、末井の最新刊「ダイナマイト人生相談」(亜紀書房)、「結婚」(平凡社)も同時発売される。

キャスト&監督コメント

【柄本 佑コメント】
「『素敵なダイナマイトスキャンダル』は久しぶりの「映画」の現場で興奮しました。
正直なところ、映画のコメントを求められた今、何を書けばいいのか?
楽しすぎて、楽しい事を楽しみ過ぎててあまり記憶がない、、、。しかし、頑張ります。
末井昭さんのことはよくよく考えてみると夜中にCMで出ている和服姿のおじさんだったのですが、
認識したのは初めてで、お会いした時、あっけらかんとした柔らかい人柄の中に、鋭く人を見抜く「目」が存在していて、怖かったです。演出される冨永監督はずっと思考してて、ギラリと光る「目」は常に何かを企んでいます。セクシーで、不気味でした。この2つの「目」に睨まれながらの現場がすこぶる怖く、すこぶる楽しかったのです!
冨永監督の持つ映画的謎なリズム、そして末井昭さんとのタッグ、
映画ファンとしてどんな作品になっているのか気になります。」

<プロフィール>
1986年12月16日生まれ。東京都出身。2003年『美しい夏キリシマ』(黒木和雄監督)で映画初出演にして初主演を果たす。最近の主な出演作は、舞台「エドワード二世」(13)、『ピース オブ ケイク』 (田口トモロヲ監督・15)、『GONINサーガ』(石井隆監督・15)、『64-ロクヨン-後篇』(瀬々敬久監督・16)、TV「スクラップ・アンド・ビルド」(NHK・16)、『追憶』(降旗康男監督・17)など舞台、映画、ドラマと幅広く活躍中。また今後は、9月に舞台「百鬼オペラ 羅生門」(シアターコクーン・17)の出演が控える。

【末井 昭コメント】
「『素敵なダイナマイトスキャンダル』は、子供の頃に母親が不倫相手とダイナマイト心中したことから始まる自叙伝です。5年前に冨永監督から、この本を映画化したいと言われました。
僕は26歳のときにエロ雑誌の編集者になったのですが、それまで工場やら看板屋やらキャバレーやら、働き口がめまぐるしく替わっています。編集者になってからも、雑誌が2回発禁になったり、不倫やら先物取引などで大変なことになったり、いろんなことが次々起こります。こんなややこしい話を映画にするのは大変だろうな、実現できないのではないか、もう5年も経ってるし、と思っていたところ、なんと映画化が決定したのです。しかも、豪華キャスト、豪華スタッフで。
どんな映画になるのでしょうか。いい雰囲気で撮影が進んでいたので、面白い映画になることは間違いないと思いますので、皆様お楽しみに!」

<プロフィール>
1948年6月14日生まれ。岡山県出身。編集者。エッセイスト。工員、キャバレーの看板描き、イラストレーターなど経て、75年雑誌「NEWSELF」を創刊、編集者となる。同年セルフ出版(現・白夜書房)入社。「ウィークエンド・スーパー」「写真時代」「パチンコ必勝ガイド」など、次々と話題の雑誌を創刊、同社取締役編集局長を長く務める。現在は文筆家として活動中。“面白く読める自殺の本”を書いてほしいと依頼されて書いた「自殺」は、第30回講談社エッセイ賞を受賞。

【冨永昌敬 監督コメント】
「映画とAVと深夜番組ばかり見て悶々と過ごしていた18歳のころ、僕はその人を初めて見ました。
夜な夜なパチンコ雑誌のCMに登場するその人は、自称「パチンコジャーナリスト」の「ゴンゾーロ末井」といい、女装で新台の宣伝を絶叫するその姿は、田舎から這い出てきて間もない世間知らずの童貞男にとってはすこぶる不気味なものでした。「こんな資本主義に毒された大人になってはいけない」と決意したその日から数年後、立ち寄った書店の棚でその人をまた見ました。「ゴンゾーロ末井」の本名を知ったのはそのときです。相変わらず和服の女装姿でしたが、なぜか表紙の写真に惹きつけられました。妙です。大学で映画をつくるようになって、少しは人生を経験して、人間や世の中を見る目が僕にも出来てきたからでしょうか。不気味どころか、末井さんの古代の賢者のような微笑みにすっかり射抜かれてしまい、さらに一読して、その微笑みにふさわしい異様な半生に驚かされました。あの怪人「ゴンゾーロ末井」がこんなにも他人の気持ちに通じ、また自分自身を知る人だったとは!何度も読むうちに頭の中で映画化を夢想してゆくと、主人公の顔がぼんやり見えてきました。柄本 佑のような顔でした。佑くん主演で『素敵なダイナマイトスキャンダル』映画化、と勝手に熱望するようになって何年経ったのか、もう分かりません。」

<プロフィール>
1975年10月31日生まれ。愛媛県出身。映画監督。『亀虫』(03)、『パビリオン山椒魚』(06)、『コンナオトナノオンナノコ』(07)、『パンドラの匣』(09)、『乱暴と待機』(10)、『庭にお願い』(10)、『目を閉じてギラギラ』(11)、『アトムの足音が聞こえる』(11)、『ローリング』(15)、ドラマ版『ディアスポリス 異邦警察』(16)、『マンガをはみだした男 赤塚不二夫』(16)など。本年11月には魚喃キリコ原作『南瓜とマヨネーズ』の公開が控えている。

<菊地成孔 プロフィール>
1963年6月14日生まれ。千葉県出身。音楽家/文筆家/大学講師。音楽家としてはソングライティング/アレンジ/バンドリーダー/プロデュースをこなすサキソフォン奏者/シンガー/キーボーディスト/ラッパーであり、文筆家としてはエッセイストであり、音楽批評、映画批評、モード批評、格闘技批評を執筆。ラジオパースナリティやDJ、テレビ番組等々の出演も多数。2013年、個人事務所株式会社ビュロー菊地を設立。冨永監督作品ではこれまで『パビリオン山椒魚』、『パンドラの匣』の音楽を担当。本作で3度目のタッグとなる。