この度、『オール・アバウト・マイ・マザー』や『トーク・トゥ・ハー』で知られるスペインを代表する巨匠、ペドロ・アルモドバル監督の最新作『ジュリエッタ』が11月5日(土)より新宿ピカデリー他全国公開となります。

2016年のカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品された本作は、「観客を選ばない堂々たる作品」「今年のコンペ21作品の中で最も余韻が残った」と絶賛され、『オール・アバウト・マイ・マザー』(99)、『ボルベール〈帰郷〉』(06)に続き、母と娘の関係を描いた巨匠アルモドバルの原点回帰にして、最高傑作とも呼び声高い作品です。

 原作は、カナダのノーベル賞作家アリス・マンローが2004年に発表した短編集「Runaway」。同一主人公でありながらそれぞれが独立したストーリーである3編を、アルモドバル自身がひと続きの物語として脚本化しました。

アルモドバルは、主人公ジュリエッタ役にふたりの女優を初めて起用。スペインのベテラン女優、エマ・スアレスがジュリエッタの“現在”に扮し、NHKで放送されたTVシリーズ「情熱のシーラ」で脚光を浴びた新進女優アドリアーナ・ウガルテが“過去”を演じている。監督は2人の女優について、「ペネロペ・クルス、カルメン・マウラ、ヴィクトリア・アブリル、マリサ・パレデス、セシリア・ロスといった私の女神たちと肩を並べる存在になった」と絶賛。アルモドバルが見出した新たなミューズたちの名演技は見逃せない。

□特報
『オール・アバウト・マイ・マザー』や『トーク・トゥ・ハー』など、センセーショナルな快作や異色作を世に送り出し、キャリアを重ねるごとに円熟味を増し、世界屈指の巨匠の地位を揺るぎないものにしたペドロ・アルモドバル。思いがけない運命や偶然に翻弄される登場人物を主人公にして、人生の豊かさや複雑さ、人間の愛おしさや切なさを描かせたら当代随一のストーリーテラーであるこの名監督の最新作『ジュリエッタ』の本編映像を収録した特報が到着しました。

スペインのマドリードでひとりで暮らしているジュリエッタは、美しく洗練された容姿の中年女性だが、人知れず、苦悩を内に秘めていた。そんなある日、ジュリエッタは偶然再会した知人から「あなたの娘を見かけたわ」と告げられ、衝撃を受ける。ひとり娘のアンティアは、12年前に理由さえ語らぬままジュリエッタの前から突然消えてしまったのだ。最愛の娘をもう一度、この手で抱きしめたい。母親としての激情に駆られたジュリエッタは、心の奥底に封印していた過去と向き合い、今どこにいるのかもわからない娘に宛てた手紙を書き始めるのだった……。

 鮮烈で艶めかしい色彩感覚にも定評があるアルモドバル。今回解禁された特報でもこのうえなく魅惑的でめくるめく陶酔感を味わせてくれる映像世界の一旦が垣間見える。美術を担当するのは長年アルモドバル作品を支えているアンチョン・ゴメス。衣装には、『ミッドナイト・イン・パリ』(11)や『マジック・イン・ムーンライト』など、近年ウディ・アレン監督作品ともコラボしているソニア・グランデ。

 特報に乗せられた楽曲は、2012年に93歳で亡くなった伝説的なランチェーラ(メキシコ伝統音楽マリアッチから派生した歌謡)歌手にして、メキシコを代表する画家フリーダ・カーロと恋仲であったともいわれるチャベーラ・バルガスの“Si no te vas(あなたが去らないなら)”。「あなたが去るなら、私の世界は終わりを告げるでしょう。あなただけが存在する世界。行かないで。あなたに去ってほしくない。あなたが去る時こそ、私が死ぬ瞬間だから」との歌詞は、愛娘を思うジュリエッタの切なる情愛の心情そのものを表している。

▼『ジュリエッタ』特報
https://www.youtube.com/watch?v=yWET_oNOOes&feature=youtu.be

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http://data.cinematopics.com/?p=55111

執筆者

Yasuhiro Togawa