アメリカ最大規模の巨大フェス SXSW (サウス・バイ・サウスウエスト)の映画部門(SXSW FILM)が、7月16日(土)から22日(金)までの一週間限定で「SXSW TOKYO SCREENING WEEK」として、新宿シネマカリテで行われているカリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2016内で開催中です。

「SXSW TOKYO SCREENING WEEK」開催2日目の7月17日(日)、「6歳のボクが大人になるまで」のリチャード・リンクレイターやスパイク・リー、ドキュメンタリーの名手マイケル・ムーア、ケヴィン・スミスなど錚々たる監督たちのプロデューサーレップとして、アメリカン・インディペンデント・シネマを牽引してきたジョン・ピアソンが特別来日し、90分に渡る特別講座を開催しました。
なかなか機会の無いこのチャンスに一般来場者の他映画クリエイターや関係者も多く集まり、セッション中様々なディスカッションが行われました。

■現代の映画製作の難しさや作品製作秘話を語る
ジョン・ピアソンは、現代の映画製作に関して次の様に述べました。
「35ミリフィルムや16ミリフィルムを使っていた過去の環境に比べると、そこまでお金をかけなくても映画製作が可能になり、簡単に製作できるツールも充実しています。しかしこれだけ手軽に映画が作れるようになってしまうと、逆に作品の数が増えてしまい、その中で目立つことが困難になっています。手軽に手がけられるとは言え、映画史の知識無くして作品は作れません。過去の作品はたくさん観て学ばなければなりませんが、コピーされた作品は評価されません。
つまり過去の作品を参考にしながらも、自分オリジナルの作品を製作することが一番難しいところではあり、且つ一番大切なことなのです。」

講座では、作品のプロデュースがきっかけで仕事をするようになったマイケル・ムーアとの出会いのエピソードや、インディペンデントフィルムメーカーが製作したTV番組の裏話、サンダンス・フィルム・フェスティバル‘99に正式出品された作品で、インディペンデント映画で異例の大ヒットを記録した「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」製作秘話など、他では絶対に聞くことができないストーリーを語りました。
移り変わる時代に合わせてヒット作品を生む難しさと、その壁を多方面から切り崩していくジョン・ピアソンのプロデュース力に来場者は感銘を受けた様子でした。

■日本映画が海外で共感を得るには
Q&Aセッションでは、ジョン・ピアソンが『七人の侍』を観て衝撃を受けたエピソードを受け、来場者から「海外の方は具体的に日本映画のどういったところに感動し、心惹かれますか?」という質問があった際、「初めて観た海外作品が『七人の侍』でしたが、西部劇のようにアメリカ人の私でも共感できる要素がいくつもある世界観でした。舞台はまったく違えど、
共感できる要素があるということが世界で評価されるには重要なポイントだと考えています。」と、日本映画が世界で評価されるための秘訣を語りました。

■「SXSW FILM」ディレクタージャネット・ピアソン特別セミナーも開催
本場「SXSW」の魅力の数々を紹介した昨日に引き続き、「SXSW FILM」ディレクターのジャネット・ピアソンが特別セミナーを行いました。
この日は、毎年2500本もの応募がある“激戦地“「SXSW」で、自分の映画を披露するための方法やエントリーの仕組みを学ぶ特別セミナーが行われました。ジャネット・ピアソンはまず、
「SXSW FILM」への作品応募に関して次の様に述べました。
「SXSWの応募は様々な部門に分かれていて、選考においては、笑えるもの、考えるもの、泣けるもの、感情を引き出すもの等色んな幅広い作品を求めています。毎年たくさん作品の応募がありますが、選ばれる作品はほんの一握りです。」

作品の評価やエントリーに関しては次の様に話しました。
「評価にはいくつかポイントがあります。観客が気に入る作品なのか、批評家が気に入る作品なのか、次世代の才能と呼べる作品であるか、多様性のある作品であるか等、クリエイターは誰に観られる作品なのか、誰に広めたい作品なのかを意識しながら、撮影の間でも戦略を立ててエントリーしなければなりません。また、日本映画は翻訳に時間がかかるので、早めのスケジューリングが重要です。」と厳しい選考通過に必要な事前準備や製作意識の大切さを語りました。

セミナー終盤では、「この映画祭に出たからといって一躍有名になれるわけではないですが、人生観を変えるような経験を得ることが期待される映画祭です。
ここに出品したいと思うならまず行って経験してほしいと思います。
そうすればビジョンも明確になり、事前に計画も立てやすくなるでしょう。」と日本の若い映画クリエイターたちの挑戦に期待を寄せていました。

■ SXSW TOKYO SCREENING WEEK 今後のスケジュール
<7月19日(火)>
18:30〜 トークイベント:サケボムプロデューサーが語るSXSW体験談
(特別ゲスト:渡辺裕之(俳優))
19:15〜 「サケボム」

<7月20日(水)>
19:00〜 「ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール」

<7月21日(木)>
19:00〜 「FRANK -フランク-」

<7月22日(金)>
18:30〜 特別ゲストトークイベント:映画宣伝いまむかし
(特別ゲスト:アークエンタテインメント専務取締役 坂上直行)

19:15〜 「ロアー」(ROAR<原題>)/ジャパン・プレミア

■「SXSW TOKYO SCREENING WEEK」
「SXSW TOKYO SCREENING WEEK」では、入場者全員に
この一週間でしか手に入らないSXSWオリジナルステッカーを
プレゼントいたします。
また、公式HPではコンテンツ盛りだくさんの
疾走感あふれる予告編動画も公開しております。
・公式HP:http://tokyoscreeningweek.jp/SXSW/
・公式SNS:@sxswtokyoscreening
・予告編動画:https://youtu.be/Fb_hcktJn8I

・座席指定券:
新宿シネマカリテ窓口または、
シネマカリテ劇場HP・オンライン予約サービスにて発売中
(公式予約サービスURL http://qualite.musashino-k.jp/
 2,000円(7/22(金))
 1,500円(7/19(火)、7/20(水)、7/21(木))
・主催:ピクチャーズデプト

執筆者

Yasuhiro Togawa