映画製作集団カーニットエービーが製作したよしもとクリエイティブ・エージェンシー所属のお笑いコンビ「ピース」又吉直樹さん主演短編映画『海酒』が開催中の「カンヌ国際映画祭」(フランス)で現地時間20日午後1時(日本時間20日午後8時)世界初公開されましたので、みなさまにご報告させていただきます。

本映画『海酒』は、愛媛県出身のショートショート作家田丸雅智さんが書いた短編『海酒』が原作となっており、田丸さんと作家同士の親交を持つ又吉さんに出演をお願いした作品です。撮影は2015年夏に東京都、千葉県、愛媛県で行われ、今年2016年初めにかけて製作されました。国内でも未だ公開されておらず、開催中のカンヌ国際映画祭が初めての公開の場となりました。

およそ100人収容のシアターパレスHには開始前から大勢の観客が詰めかけ、日本の海の色にこだわって製作された作品の色彩や、英語の字幕で繰り広げられる原作の世界観、又吉さんとミッキー・カーチスさんの独特な演技が観衆を引きつけたのか、上映中は固唾をのむような静けさが漂い、上映後には大きな拍手が沸き起こりました。

メキシコから来た映画製作会社の女性は「映像が非常に美しく感銘を受けました。また映画から日本の文化の魅力も伝わってきました」と話していました。またアメリカの映画祭関係者の女性は「出演者の演技が大変素晴らしかった。またストーリーもとてもチャーミングで、非常に完成度の高い映画だと思います」と話していました。

現地での反応にプロデューサーの中臺孝樹は「日本文化の持つ余白を映像の美しさと共に十分に理解してもらえた」と手ごたえ。スケジュールの都合などで現地入りできなかった又吉さんらに、反響を報告することにしています。

『海酒』は、引き続き「マドリード国際映画祭」(スペイン)、「ショートショートフィルムフェスティバル」(日本)、「コロンビアフィルムフェスティバル」(アメリカ)で上映されることが決定しており、さらには「札幌国際短編映画祭」、「シカゴ国際映画祭」、「ハリウッドショートフィルムフェスティバル」、「ニース国際映画祭」、「トロント国際映画祭」など国内外の多数の映画祭に出品されています。

■短編映画『海酒』概要
製作:映画製作集団カーニットエービー
監督:吉岡建 企画・脚本:アベマサヒト 原作:田丸雅智『海酒』 プロデューサー:中臺孝樹、小宮誠
出演:又吉直樹、ミッキー・カーチス 配給:未定
(あらすじ)
あのバーに初めて入ったのは二年前だった。飲み会からの帰り道、近道をしようと薄暗い路地へ入って行くとかすかに漂ってくる潮の香りに気がついた。香りの元を探して見つけたのは小さなバーだった。思わず店に入ってみると優しい黄色に包まれた店内には初老のマスターがひとり。「初めての方ですね。うちは一種のストレートだけですが、構いませんか?」メニューを見るとウメ酒と書かれている横に細かく地名の書かれた地図が描かれている。なるほどここは全国のウメ酒を集めたバーなのか。僕は適当な地名のものをオーダーしてみた。しばらくしてマスターが出してきたお酒はあまりに美しくて僕は呆然となった。「お待たしました、お客さんがオーダーされた海酒です」え、いま何て言った・・・海酒だって? メニューを改めて見ると確かにウメ酒ではなかった、海酒だ。僕はそのお酒を慎重に口に運んでみた・・・。すると——海酒という夢のようなお酒をテーマにした心温まる物語。観た人を故郷の思い出探しの旅へと誘う、色彩豊かな映像作品に。

執筆者

Yasuhiro Togawa