本作『ガルム・ウォーズ』は、1990年代後半に『G.R.M.』プロジェクトが立ち上げられた当初から、ケルト文化の影響を色濃く受けて構想されました。ケルトとは、キリスト教文化が広まる以前に中部ヨーロッパから現在のイギリス諸島にかけて文明を築いた民族です。今回『ガルム・ウォーズ』として具現化された本作の映像中にもケルト由来の渦巻文様や登場するキャラクターの呼称(神の名ほか)、そしてケルト語を祖とするゲール語によって歌われた主題歌など、押井監督によるケルトへのこだわりが多数ちりばめられています。

押井監督がケルトに惹かれたきっかけには、鈴木敏夫プロデューサーと宮崎駿監督が深くかかわっています! 1986年に『天空の城ラピュタ』が公開された頃、鈴木氏と宮崎監督は、両氏がその才能を高く評価していた若き日の押井守監督をともなってケルト文化の遺跡が多く残る英国アイルランド地方へ旅行をしました。そのときアイルランドで目にした荒涼とした光景に、押井監督は自身の原風景を感じたのだといいます。
「とにかく、その風景に目を奪われた。この世の果てみたいに寂寞としていてさ。いつかここで映画を撮ってみたいと思ったんだ」と監督は後に述べています。
 その旅行で目にしたアイルランドの情景から広がった押井監督の空想世界が『G.R.M.』そして『ガルム・ウォーズ』へと結実することになったのです!

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執筆者

Yasuhiro Togawa