『ダム・キーパー』Blu-ray&DVD好評発売中!
作品のアートワークを展示するトンコハウス展開催中、
さらに4月29日(金)にEテレにて『ダム・キーパー』放送!

『トイ・ストーリー3』や、『モンスターズ・ユニバーシティ』のアートディレクターを務めた堤大介、ロバート・コンドウの二人が初めてメガホンをとったオリジナル短編アニメーション『ダム・キーパー』は、2014年ベルリン国際映画祭で公式上映され、世界中の国際映画祭で20以上もの賞を受賞。2015年米国アカデミー賞の短編アニメーション部門にノミネートされる話題作となりました。

本作『ダム・キーパー』ですが、豪華特典を収録したBlu-ray&DVDが好評発売中、さらに、本作のアートワークを展示するトンコハウス展も現在開催中。作品の世界観をお楽しみいただける展示会を開催しています。
さらに、4月29日(金)9:55〜よりEテレにてTV放送が決定しました。大気汚染に覆われた時代を背景に描かれる一人の少年の物語をご覧いただけます。

『ダム・キーパー』と、新作『ムーム』について、堤大介、ロバート・コンドウ両監督にオフィシャルインタビューを行い、作品についての魅力や、制作を振り返ってのお話をたっぷりと伺いました。
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──堤さんとロバート・コンドウさんが一緒に作品を作りはじめた経緯を教えてください。
ロバート・コンドウ(以下、ロバート):僕とダイス(堤)がピクサーで『モンスターズ・ユニバーシティ』のアートディレクターをしていた時に、ダイスが一緒に短編を作ろうよと誘ってきたのがきっかけです。
堤大介(以下、堤):それまでこの仕事を長くやってきて、アートディレクターとしての評価もいただいて、本当に楽しく、なんの不満もなく働いていました。でもある時ふと、なんで自分がこの仕事をやっているのかを考えた時に、明確な答が出せなかったんです。それで、自分自身の作品を作れば何かその答が見つかるかもしれないと思ったんです。

──“自分たちの作品”として、物語も含めてゼロから『ダム・キーパー』を作りあげるのはどんな経験でしたか?
ロバート:本当に大変でした。はじめてお話を作り、アートディレクションに限らない分野……アニメーターさんや、音楽といったものも含めた全てを監督して、責任を持たなければならないですからね。毎日予想もしないことが起こる激動の日々でした。

──ピクサーに所属しながら『ダム・キーパー』を完成させた後、堤さんとロバートさんはピクサーから独立し、トンコハウスを立ち上げる選択をします。それはどんな想いからだったのでしょうか。
堤:『ダム・キーパー』完成後にピクサーに戻った時、それまで見ていたピクサーの景色が違ったものに見えたんです。『ダム・キーパー』の制作を通して、自分たちはとても成長したと実感できたんですね。
ロバート:学生時代や駆け出しの頃って、できなかったことができるようになって、毎日成長が実感できるじゃないですか。でも経験を積んでくると、常にハードルを越えて、達成して成長するという実感が薄れてくる。ピクサーの恵まれた心地良い制作環境に戻った時、今の自分たちが成長し続けるためには、『ダム・キーパー』を作っていた激動の日々が必要なんじゃないか? と感じたんです。

──ピクサーを離れるというのは、とても大きな賭けですよね。
堤:アートディレクターとして評価してもらって、素晴らしい待遇と環境が与えてられて安定していましたからね。僕にもロバートにも家族はいますから、辞めてどうするんだ! という話ですよ(笑)。でも、それを踏まえても一度自分たちの会社を作って、自分たちの足で立ってみるしかないじゃないかという気持ちが大きかったんです。

──『ダム・キーパー』は油絵のようなタッチの2Dアニメです。『トイ・ストーリー3』や『モンスターズ・ ユニバーシティ』のような3Dアニメーションとは違う手法を選ばれたのは何故なのでしょうか。
ロバート:出発はあまり考えてなかったんですよ(笑)。3Dアニメーションの世界でやってきたんですが、僕たちの仕事は絵描きとして絵を描いて、CGスタッフにその絵をもとにアートディレクションをすることだったんですね。だから、2Dアニメーションなら自分たちだけの手でできるのではないか、と思ったんです。一枚一枚描いていけば映画ってできるんじゃない? と安易な気持ちでスタートしたのが、苦労のはじまりだったんです。最終的には70人ぐらいの人を巻きこむことになりました。

──短編アニメーションの世界で70人といえば、かなりの人数に思えます。
堤:『ダム・キーパー』に参加してくれたスタッフは、みんなほかに仕事を抱えているかたわらやってくれていたんですね。一人の人に課せられる負担には限界があったので、限られた期間それぞれの得意分野で集中して参加してもらったんです。基本ボランティアのプロジェクトだったので、それぞれのモチベーションが命でしたから。だから70人といっても、大体10人ぐらいのメンバーがコアとして稼働していたイメージだと思います。

──堤さんとロバートさんが手がけたストーリーは、どのように生まれたんですか?
ロバート:物語を作りだすのは僕たちが一番成長したいポイントでもあったんですが、本当に大変でした。絵が描けると、描けない人はすごいって思うじゃないですか。ストーリーは誰もが作れそうと思うんですが、やってみると本当に難しい。『ダム・キーパー』を作り上げるまでに幾つものストーリーを作っては捨てでした。ピクサーのストーリーの達人に見せて酷評されて一晩で書き直したりと、本当にいろいろとあったんですよ。

──ボツ案を拝見すると、汚染された環境とおじいさん、といったモチーフが多いですね。
堤:それらはモチーフではあるんですが、僕らがテーマとして描きたいのはキャラクターの感情だったんです。感情を描くのは当たり前のように思えますが、たとえばピクサーで作る短編アニメーションとかは、短い時間で表現するためにスラップスティックであったり、かわいかったり、面白かったり、そういう作品が多いんです。僕らが環境にまつわる話を描いていたり、『ダム・キーパー』でいじめを描いたりしているのは、感情を表現するにあたって、それらが見る人の身近な世界にしたかったからなんですね。ここでモチーフにしているものって、今の僕らの日常じゃないですか。お客さんにとって嘘の世界を作らないことが僕らにとっては大事で、モチーフは自然にでてきました。

──短編アニメーションで環境問題について描くのは、堤さんが『スケッチトラベル』制作中に出会ったフレデリック・バックさんの影響もあるのでしょうか。
堤:フレデリック・バックさんの影響はありますね。僕が一番目指している人なので……それは作品というより、人間としてなんですけど。僕らは作品を通じて直接環境問題や社会問題を訴えたい、という気持ちはないんです。僕たちを取り巻く世界にあるそういう環境をお客さんとの間に置いて、対話がしたいんですね。見た人がそこに何かを感じて感想を言ってくれると嬉しいし面白いなと思うんです。『ダム・キーパー』をサンフランシスコの小学校に持って行って回ったことがあるんですが、子供たちが何を感じたかをすごく話しあってくれたんですね。その時が一番幸せな時間でした。僕らが何を伝えたいかよりも、見てくれた人が何を感じたかを大事にしたいんです。

──最新作の『ムーム』についても伺います。原作の川村元気さんの絵本は、むしろ堤さんが手がけた『スケッチトラベル』のプロモーションムービーに近いような手描きのタッチなので、アニメが実写と見紛うような3DCG表現だったのは少し驚きました。
ロバート:これはピクサーでも大事にしていた信条ですが、ビジュアルというものは物語をサポートするものでなければならないんです。『ムーム』は思い出が物に詰まっているというコンセプトで、思い出であるキャラクターたちとはとても幻想的な存在です。それを描く画面全体が同じようなトーンだと、キャラクターのファンタスティックさにフォーカスがいかないと考えたんです。抽象的なものを具象化する分、それ以外のものに関しては、画面に映るものが先週まで自分が持っていて捨ててしまったような、そういう質感にしたいとこのお話を読んで思ったんです。

──少しでもキャラクターと背景のバランスが崩れると浮いてしまう難しさもありそうです。
堤:そうですね。そこは本当にチャレンジで、しかも一番お金がかかる手法なんですよ。プロデューサー陣には頭の痛い思いをさせてしまいました。でもやはり僕たちにとってお話を引き立てる上で一番のやり方だと思ったので、そこはこだわって良かったなと思います。

──ムームたちは無駄を削ぎ落としたシンプルな造形ですが、作中ではとても表情豊かで、感情が伝わってきます。
堤:先ほどお話したとおり、感情の表現はとても大事にしています。そこでも大事にしているのは、僕たちが伝えたいことというより、見る人が何を感じ取ってくれるか。トンコハウスの譲れない方針として、参加する全てのプロジェクトは自分たちがパーソナルなコネクションを持てるものでないといけないと考えているんです。だから実は、最初『ムーム』の映像化は一度はお断りしてるんです。川村さんの世界と物語をそのままアニメにするのは僕らにはできないので。でもその後『ムーム』について話す中で、自分たち自身の思い出や記憶を語っていて、ロバートが4歳の時にひいおばあちゃんを亡くした話をしてくれたんですね。その時、死という概念はわからないけど、大切な誰かがいなくなってしまったことはわかる。その経験って『ムーム』なんじゃない? と話したんですよ。ムームも、あの世界に何故自分がいるかはわからないけれど、心に確かに傷を持っている。原作者の川村さんがすごいのは、一貫してトンコハウスのムームが見たいと言ってくれたんです。彼は本業は映画のプロデューサーなので、そこはとても理解を示してくれました。彼がロバートのひいおばあちゃんの話から感じたことも含めた表現としての『ムーム』を見たいと言ってくれたので、それなら是非やらせて頂きたいとなりました。

──アニメのムームが市井のヒーローを感じさせる消防士の帽子をかぶっていたのは原作にはなかった要素ですし、物語の締め方にもとても大きな違いがありますね。
ロバート:僕たちは映画を作る時に、画面の外側にあるものを想像させることがとても大事だと思うんです。ムームの過去や物語を、お客さんが想像できる何かを入れたいんですね。ムームのハットにも、本編とは直接かかわらない描写を色々といれています。物語のラストについては、実は僕たちも最後まで一番迷ったところなんです。だから、見て頂く時は最後まで見届けて、考えてもらえると嬉しいなと思いますね。

──アニメの『ムーム』には、どんな文化圏、言語圏の人にも伝わる普遍性があるように思います。
堤:それはこのプロジェクトが最初から大切にしていることで、国境を超えて伝えたいという想いがあるからこそ、僕たちにお話を頂けたんだと思っています。どこの国でも、子どもでも大人でも、誰でもこういう気持ちってわかるよねということは大切にしています。

──最後にメッセージをお願いします。
ロバート:はい。実は今、銀座のクリエイションギャラリーG8というところで、“トンコハウス展 「ダム・キーパー」の旅”という展示をやっています。『ダム・キーパー』の原画や『ムーム』のコンセプトアートはもちろん、トンコハウスが進めている未来のプロジェクトにまつわるものも大胆に見せています。皆さん是非見に来て頂ければと思います。

──ありがとうございました!

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Eテレにて『ダム・キーパー』TV放送決定!
『トイ・ストーリー3』や『モンスターズ・ユニバーシティ』のアートディレクターを務めた堤大介、ロバート・コンドウの二人が初めてメガホンをとった作品『ダム・キーパー』。2014年ベルリン国際映画祭で公式上映され、世界中の国際映画祭で 20以上もの賞を受賞し、2015年米国アカデミー賞 短編アニメーション部門にノミネートされた本作のTV放送が決定!

放送日:4月29日(金)9:55〜
放送局:NHK Eテレ

トンコハウス展「ダム・キーパー」の旅 4月30日(土)まで開催!
『ダム・キーパー』を生み出した堤大介、ロバート・コンドウのスタジオ、トンコハウスの世界を紹介する
展覧会が好評開催中。「ダム・キーパー」のキャラクターデザインやマケット、背景やストーリー設定など、作品の世界観を作り上げるさまざまなアートワークをご紹介いたします。また、スペシャル企画として、こま撮りアニメーションのスタジオ「ドワーフ」やジオラマアーティストの荒木智との新作コラボレーションも展示。あわせて、サンフランシスコにあるトンコハウスの内装を再現したスペースでは、これまでの仕事や進行中の
プロジェクトもご紹介します。

場所:東京都中央区銀座 8-4-17 リクルート GINZA8ビル1F
会期:好評開催中(4月 30日(土)まで)
開館: 11:00 a.m.-7:00 p.m.(日曜・祝日休館)入場無料

『ダム・キーパー』Blu-ray & DVD発売!
オリジナル短編アニメーション映画『ダム・キーパー』の Blu-ray & DVDが好評発売中!
今回、日本国内での初パッケージ化にあたり、本編映像に加え、映像特典として新規撮り下ろしメイキング、音声特典として柄本明氏による日本語吹き替えナレーションを収録!
また、封入特典として 80P特製ブックレットを封入!

■ダム・キーパー Blu-ray
価格:\ 5,300+税/品番:TBR26068D/POS:4988104100689
仕様:本編 18分+映像特典 93分/カラー/ 1080p High Definition/ビスタサイズ/
音声 1:英語リニア PCM 2.0chステレオ 音声 2:英語 DTS-HD Master Audio
5.1chサラウンド 音声 3:日本語リニア PCM 2.0chステレオ 音声 4:日本語
DTS-HD Master Audio 5.1chサラウンド/字幕 1:日本語 字幕 2:英語/ 1層(BD25G)

■ダム・キーパー DVD
価格:\ 4,300+税/品番:TDV26069D/POS:4988104100696
仕様:本編 18分+映像特典 93分/カラー/ 16:9LBビスタサイズ/
音声 1:英語リニア PCM 2.0chステレオ 音声 2:英語ドルビーデジタル 5.1ch
サラウンド 音声 3:日本語リニア PCM 2.0chステレオ 音声 4:日本語
ドルビーデジタル 5.1chサラウンド/字幕 1:日本語 字幕 2:英語/片面 1層

【封入特典】
●80P特製ブックレット

【映像特典】
●映画『ダム・キーパー』をつくった 2人
●『ダム・キーパー』日本語版収録風景メイキング
●堤大介×柄本明特別対談
●メイキング・オブ・『ダム・キーパー』
●「日本語版 DVDリリースに向けて」堤、コンドウ両監督のメッセージ
●『ダム・キーパー』の今後
●川村元気氏インタビュー
●PHOXが奏でる『ダム・キーパー』テーマ曲ミュージックビデオ
●スケッチトラベル短編アニメーション
●『ダム・キーパー』予告編

【音声特典】
●日本語吹き替えナレーション(出演:柄本明)

<STORY>
時は、世界が大気汚染に覆われた時代。
汚れた大気と暗雲の影響を受けずに、生きながらえてきた小さな街があった。
街は大きなダムによって、その呪われた大気から守られていた。
主人公は豚の少年。家族も、友達もいない。
家族代々受け継がれて来たダム・キーパーの仕事は、今は少年一人によって行われていた。
その仕事は8時間に一度、歯車のネジを巻いて風車を動かす事で、汚染された空気をダムの外側に追い出すことだった。
長い間平和ボケした街人たちは、ダムが誰によって動かされているのか、そもそもダムの向こう側に何があるのかすら、
忘れてしまっていた。
そんなある日、彼の学校にキツネの転校生がやってくる。
絵を描く事が好きで、天真爛漫なキツネとの出会いは、少年のその後の人生を大きく変えるきっかけとなる。

<STAFF>
監督:堤大介 ロバート・コンドウ/作画監督:エリック・オー/編集:ブラッドリー・ファーニッシュ
音楽:ザック・ジョンストン&マテオ・ロバーツ/プロデューサー:メーガン・バーテル ダンカン・ラムジー
デベロップメントプロデューサー:小林志乃

<CAST>
ナレーション:ラーズ・ミケルセン
日本語吹き替えナレーション:柄本明

発売・販売元:東宝

堤大介&ロバート・コンドウ監督最新作『ムーム』
「世界から猫が消えたなら」などで知られる川村元気氏による絵本「ムーム」(絵・益子悠紀)を堤大介&ロバート・コンドウ監督がアニメ化。2016年3月から各国の映画祭で上映され、カナダ国際映画祭で最優秀アニメーションフィルム賞(長編含む)を受賞するなど話題を呼んでいる。

執筆者

Yasuhiro Togawa