『亡国のイージス』の阪本順治監督や『相棒』の和泉聖治監督のもとで助監督を、TV「相棒」シリーズでは監督を務める東伸児が、直木賞受賞作家・乃南アサのベストセラー小説『しゃぼん玉』(新潮文庫刊)を映画化することが決定しました。本作が劇場初監督作品となります。
原作は、親に見捨てられ、通り魔や強盗傷害を繰り返す無軌道な若者が、逃亡先で偶然出会った老婆や村の人々の愛情によって、失くした感情を取り戻していく。宮崎を舞台に、孤独な若者と老婆の出会いを通じて血の繋がりを超えた絆を描いた感動傑作。

主演の伊豆見役に『荒川アンダーザブリッジ』(主演)、『悪の教典』、又吉直樹原作のドラマ「火花」(主演)など立て続けに話題作に出演し、近年活躍が目覚ましい林遣都。伊豆見が逃亡先で出会う老婆・スマ役に、日本を代表する女優・市原悦子。ある事件をきっかけに村に戻ってきた美知役には、秋公開『デスノート2016』などに出演するほか、韓国で爆発的人気を誇る新鋭・藤井美菜。厳しくも伊豆見を見守る村人・シゲ爺役に綿引勝彦、スマの息子役に相島一之を迎えます。

3月18日に宮崎県でクランクイン、19日には、本作のメインロケ地となる宮崎県椎葉村にあるスマの家のロケセットでお祓い、製作発表会見が行われ、お祓いには原作者の乃南アサ、監督の東伸児、出演者の林遣都、市原悦子が出席し、映画の無事完成を祈願しました。
本作は、延岡市、日向市、門川町、諸塚村、椎葉村、美郷町、高千穂町、日之影町、五ヶ瀬町の宮崎県北部の9市町村で構成される宮崎県北部広域事務組合(天孫降臨ひむか共和国)が特別協賛、また宮崎県の後援が決定しております。

本作は2017年春公開を予定しております。

■東伸児監督コメント

撮影の意気込みについて
企画立ち上げから3年、ようやく映画化できる事を大変嬉しく思っております。
登場人物はもちろん、豊かな自然や食物、そこで暮らす人々の温かさなど、舞台となる宮崎県北部(天孫降臨ひむか共和国)や椎葉村の魅力を存分に感じる映画にしたいと思っています。
キャストの起用について
主演の伊豆見役には、本作では、極力台詞を排して細かい表情や行動で心情を描きたいと思っていたので、繊細な表情や存在感が際立つ役者さんだと常々思っていた林遣都さんにお願いしました。
また、突然やって来た「訳ありな若者」に、何も聞かず黙って受け容れるスマ役には、「懐の深さ」「包容力」を感じさせる方が良いと考えた時、一番に市原悦子さんが頭に浮かび、出演をお願いしました。

■林遣都コメント

愛はどこからでも生まれ、人を築いていってくれる。どんなに苦しくても、大切な何かを失っても、生きてさえいて、誰かが見ていてくれれば、必ず取り戻すことができる。
原作を読み、自分自身と重ね合わせ強く感銘を受けました。
自分の居場所を見つけ、愛を知り、どんどん変わっていく伊豆見の心の動きを、大事に、繊細に表現したいと思います。

■市原悦子コメント

今までも山奥での撮影というのは数回ありました。『黒い雨』『わらびのこ』。
やはり共通しているのは、自然の中でありのままに生活するということです。
厳しい自然の中をどう生きて、何を子孫に残していくのか、そして最後は自然の中で順番に死んでいく。
映画『しゃぼん玉』も人間本来の生を全うして、自然の中で自然に寄り添って生きていく・・・原点に戻らされる作品だと思います。そんなことが、映画の中で青年にどう伝えることができるのか、難しいと思います。
一人がどう頑張っても駄目だし、原作があって、監督が居て、この自然があって、そして私たち役者がその一部となって、映像的にどう映るのか。映画もお芝居も総合芸術とよく言われますが、まさに誰か一人が特殊な魅力があっても駄目だし。
そこで何が映し出されるのか、光と影、自然の移り変わり、空気、そういうものが織り成す映像が出来るかどうか。
結局は、みんながそんな事を考えてどうするのか。とても結果が楽しみですね。映画に出てくる人はみんな地味だしね(笑)

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執筆者

Yasuhiro Togawa