今回が初の試みとなる日本映画大学 3 年理論コース主催の特集上映。記念すべき最初の特集は「団地」となった。日本の住まいにおいて、団地ほど世代においてそのイメージの異なるものはないだろう。ある世代にとってはあこがれの対象であり、またある世代にとっては旧時代の住まいというイメージかもしれない。映画においてもそれは例外ではなく、時代とともに描かれ方も変わってきている。
それは単純に 60 年代の作品ではあこがれの対象として描かれ、現代ではそうではないという単純な比較だけでなく、団地が内包する魅力や、問題点が時代とともに変わってきているということだ。

今回、8 プログラムを上映するに辺り、一つ一つの作品を楽しむことはもちろん、時代や同じ団地が舞台の作品であれど題材が全く異なるものを比べるような楽しみ方も出来るだろう。そして最終的にその作品たちを並べた時、一つの線となり団地以降の時代の一端を掴む何か一つきっかけになれば幸いである。

【開催概要】
主催:日本映画大学 3 年理論コース 上映企画ワークショップ
名称:ベランダから見る世界 映画の中の団地
期間:2016 年 2 月 12 日(金)〜2 月 14 日 (日) (全 3 日間)
会場:川崎市アートセンター
作品数:8(予定)

【上映作品】
『団地 七つの大罪』 A
日本 / 1964 / 87 分 / 監督千葉泰樹、筧正典 / 脚本:長瀬喜伴 / 原作:竹中労、塩田丸男
出演:森繁久彌、左ト金、伴淳三郎、フランキー堺
配給:東宝
東京 23 区では初の大型団地である赤羽台団地を舞台に、豪華俳優たちの共演で団地に住む人々を描くオムニバス形式の喜劇。現在とは違った、団地に住むことが一種のステータスであった時代の団地のイメージが語られる冒頭のナレーションが印象的。

『彼女と彼』 B
日本 / 1963 / 117 分 / 監督:羽仁進 / 脚本:羽仁進、清水邦夫
出演:左幸子、岡田英次、山下菊二、長谷川明男
配給:岩波映像株式会社
当時の百合ヶ丘団地を舞台に、団地に住む人々とその団地に隣接するバタヤ部落の対立を軸にコミュニティとしての閉塞感・希薄さ、善意・善行の難しさを描く。1963 年度キネマ旬報ベストテン第 7 位、ベルリン国際映画祭特別賞受賞。

『彼女について私が知っているニ、三の事柄』 D
Deux ou trois choses que je sais d’elle / フランス、イタリア / 1966 / 90 分 / 監督・脚本ジャン=リュック・ゴダール
出演:マリナ・ヴラディ、アニー・デュプレー、ロジャ・モンソレ、ジャン・ナルボニ
配給ザジフィルムズ
「ル・ヌーヴェル・オブセルグァトゥール」誌に掲載された記事をもとに、団地で行われる主婦売春をドキュメント的に描きながら、フランスの社会的状況をえぐり出した作品。今回の上映作品でもある日活ロマンポルノの第一作『団地妻 昼下がりの情事』にも深い影響を与えた作品、

『団地妻 昼下がりの情事』 D
日本 / 1971 / 64 分 / 監督:西村昭五郎 / 脚本:西田一夫
出演:白川和子、浜口竜哉、南条マキ、関戸純方
配給:日活
後に 10 年以上にわたって展開し、現代の有名監督も多く排出した日活ロマンポルノの第一作。団地に暮らす平凡な主婦が日々の生活に欲求不満を募らせた挙句に浮気に走り、さらにそれをネタに売春組織に引きずり込まれ破滅するまでを描く。団地妻、という存在は団地が持つ閉塞感の中で生まれたものとも言えるだろう。

『みなさん、さようなら』 A
日本 / 2012 / 120 分 / 監督:中村義洋 / 脚本:中村義洋、林民夫
出演:濱田岳、倉科カナ、永山絢斗、波瑠
配給:ファントム・フィルム
1981 年、12 歳の時にとある出来事をきっかけに生まれ育った団地から出ずに生きる事を決めた少年の 30 歳までを孤独や葛藤、時代の移り変わりとともに描く。団地の利便性と閉鎖性、コミュニティとしての団地が少しずつ崩壊して行く様子が見られる。

『どこまでもいこう』 C
日本 / 1999 / 75 分 / 監督・脚本:塩田明彦
出演:鈴木雄作、水野真吾、鈴木優也、芳賀優里亜
配給:ユーロスペース=映画美学校
郊外のニュータウンを舞台に同じ団地に住み、いつも連れ立っている少年 2 人を中心に子どもたちの心の機敏を描く。ナント三大陸映画祭審査員特別賞他 3 賞受賞。1999 年度キネマ旬報ベストテン第 9 位。団地だからこそ生まれる子どもたちのコミュニティ、そしてその限定性。

『ふがいない僕は空を見た』 B
日本 / 2012 / 142 分 / 監督:タナダユキ / 脚本: 向井康介
出演:永山絢斗、田畑智子、窪田正孝、小篠恵奈
配給:東京テアトル
男子高校生と主婦の不倫関係を軸に性と生への葛藤を映し出す青春群像劇。この映画では団地はメインパートには登場しないが、1960 年代に作られてきた映画とは真逆と言ってもいい現代における団地の描かれ方として強烈な印象を残す。2012 年度キネマ旬報ベストテン第 7 位

『アタック・ザ・ブロック』 C
Attack the Block / イギリス / 2011 / 88 分 / 監督・脚本:ジョー・コーニッシュ
出演:ジョン・ボヤーガ、ジョディ・ウィテカー、アレックス、エスメイル、ニック・フロスト
配給:パルコ
南ロンドンのブロック(=団地)に隕石の落下とともにエイリアンが出現。団地を襲うエイリアンたちと不良少年たちの戦いを描く。『ホット・ファズ –俺たちスーパーポリスメン!-』などのエドガー・ライトが製作総指揮を務める。

お問い合わせ
代表:日本映画大学 3 年 安藤涼太
Mail:eigadaifes2015.film@gmail.com

執筆者

Yasuhiro Togawa