芸術の秋、やはりこの時期には、美術館やコンサートなど、大人が楽しめる芸術と触れ合いたくなる人も多いのではないだろうか。この秋オススメしたい、名優たちの演技が光るヨーロッパ映画『パリ3区の遺産相続人』『ローマに消えた男』が11月14日(土)よりロードショーとなります。

一本目は、歴史と文化の街パリのマレ地区を舞台にした家族ドラマ『パリ3区の遺産相続人』(11/14 Bunkamuraル・シネマほかロードショー)をご紹介。ケヴィン・クライン×マギー・スミス×クリスティン・スコット・トーマスの豪華アカデミー賞俳優の競演が魅せる、細やかな感情表現と人生の哀歓が味わい深い。ほとんどのシーンが、パリのアパルトマンの中で撮影され、大きな動きや効果もないからこそ、3人の絶妙なセリフ回しでそれぞれの人生の傷と愛する人への想いがより克明に浮き彫りになっていく。
マティアス(ケヴィン・クライン)は、父親が亡くなり相続した豪華なアパルトマンを売りにパリへやって来る。しかしそこには老婦人マティルド(マギー・スミス)と彼女の娘クロエ(クリスティン・スコット・トーマス)が住んでいた。さらにフランス伝統の不動産システム“ヴィアジェ”により、老婦人が亡くなるまでアパートを売却できないと知る。アパルトマンを売る機会を虎視眈々と狙うマティアスだったが、マティルドたちと暮らすうちに彼の家族の秘められた歴史を発見していく。それは亡き父のメッセージであり、運命を変える新しいスタートだった。

二本目は、イタリア・ローマの政界を舞台に替え玉事件を描いたヒューマンミステリー『ローマに消えた男』(11/14YEBISU GARDEN CINEMAほかロードショー)。『グレート・ビューティー 追憶のローマ』などで知られるイタリアの名優トニ・セルヴィッロが1人2役を演じている。外見は瓜二つながら、性格も社会的地位も対照的なキャラクターを通して、人間の二面性や人生の光と影を体現してみせる懐の深さに、誰もが驚嘆せずにいられないだろう。
イタリア統一選挙を控えたある日、支持率が低迷しているイタリア最大の野党の党首エンリコが突如行方をくらませた。困り果てたエンリコの部下アンドレアは、エンリコの双子の兄弟ジョバンニを替え玉に起用。するとジョバンニは、ウィットとユーモアに富んだ言葉で瞬く間に世間を魅了していく。ローマから“消えた男”と“現れた男”、やがてイタリア全土を揺るがす極秘の替え玉作戦は思いがけない急展開を見せるのだった。

今年は、『マッドマックス』『アベンジャーズ』『ミッション:インポッシブル』『ジュラシック・ワールド』『進撃の巨人』など、ハリウッドや邦画のアクション超大作が続々と公開になり、やや食傷気味という方も多いのでは?落ち着いた秋にぴったりの、名優たちの円熟味ある演技が光るヨーロッパ映画を是非堪能してほしい。

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執筆者

Yasuhiro TogawaYasuhiro Togawa