第68回カンヌ国際映画祭グランプリ作品。ハンガリーの若き気鋭監督、衝撃のデビュー作!

 1944年10月、アウシュヴィッツ=ビルケナウ収容所。サウルは、ハンガリー系のユダヤ人で、ゾンダーコマンドとして働いている。ゾンダーコマンドとは、ナチスが選抜した、同胞であるユダヤ人の屍体処理に従事する特殊部隊のことである。ある日、サウルは、ガス室で息子とおぼしき少年を発見する。少年はサウルの目の前ですぐさま殺されてしまうのだが、サウルはなんとかラビ(ユダヤ教の聖職者)を捜し出し、ユダヤ教の教義にのっとって手厚く埋葬してやろうと収容所内を奔走する・・・。

今年のカンヌ国際映画祭のコンペ部門で、ある無名の新人監督の作品が上映されると、場内は異様な興奮に包まれ、その衝撃は瞬く間に映画ジャーナリストたちの間に伝播していき、その卓越した撮影法と演出により、長篇デビュー作にして見事カンヌのグランプリを獲得するという異例の快挙を成し遂げた。その新鋭とは『ニーチェの馬』で知られる名匠タル・ベーラの助監督をしていた38才のハンガリー出身のネメシュ・ラースロー。強制収容所に送り込まれたユダヤ人が辿る過酷な運命を、主人公サウルの顔に焦点を当て背景に描写する事により、サウルが見たであろう痛ましい惨劇を見る者に想像させ、喚起させる。今まで描かれた事の無いリアルなホロコーストの真実と、極限状態における人間の尊厳を描いた作品。

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執筆者

Yasuhiro Togawa