闇の暴力に支配された刑務所を舞台に、ひとりの愛を知らない不良少年が初めて生きる希望を見つけていくさまを骨太かつ鋭利なリアリズムで鮮烈に描く『名もなき塀の中の王』が10/10(土)より、K’s cinemaほかにて全国ロードショーとなります。

未熟な不良少年エリックが少年院から成り上がりとして刑務所に入るがそこは野獣のような囚人ばかり。暴力でしか自らの存在を示せずに刑務所の秩序を乱し孤立していく。触れるものすべてを傷つけ、誰も近づけないエリックだったが刑務所で父ネビルと再会し、少しずつ仲間もできていくが、これまでの暴力沙汰の代償がエリックに迫ってくる、といったストーリー。

本作は、「クラムリン・ロード刑務所」で実際に撮影され、よりリアリズムにこだわった。そのため、劇中で出てくるセリフは、ほとんどと言っていいほどスラングであり、刑務所で実際に使われている刑務所用語ばかりなのだ。全米で公開された際にも、内容は大絶賛されたが、皆口をそろえてセリフについて言及した。

登場人物が喋っていることの半分も理解できなかったとして、心配することはない。使われているのはいわゆる刑務所用語であり、デビッド・マッケンジー監督による芸術的意図、そして英国刑務所にはびこる残忍さを表現しているのだ。刑務所内で生まれる競り合いにきついなまりを帯びた隠語を使用することで、囚人たちは意思の疎通を図っている。—Variety

ここ数年で最も荒く、暴力的であり、アメリカ人の耳には理解不能の英国刑務所のドラマ。物語は簡単な構図であり、力学が明確であるため、観客は物事の要点を拾うことはできる。だが、なまりのきつい、スラングだらけの本作では、そのすべてを読み取ることは難しい。これは刑務所独特のものであるのかどうか判断することもだ。スラングにより欠けている情報が何か考えながら観ることにイラつくこともあるだろう。
−The HollyWood Reporter

英語に自信がある人にとって、アメリカ人でさえもさじを投げたスラングがいくつわかるのかを、字幕を読まずに挑戦してみるというのも、楽しみ方の一つだ。『名もなき塀の中の王』は10月10日(土)よりK’s cinemaほかにて全国順次ロードショー。

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執筆者

Yasuhiro Togawa