1970年、ベトナム反戦運動の激化を背景に、大統領は治安維持法を発令、米政府は反政府分子を根こそぎ拘束。一方的な裁判にかけられた彼らは、求刑通り懲役を全うするか、カリフォルニア州「ベアーマウンテン国立懲罰公園」で人間狩りの標的として3日間を生き延びるか、二者択一を迫られる—。
 ついに8/29(土)より新宿シネマカリテにて制作から40年以上の時を経て日本初公開となる『懲罰大陸★USA』。1965年に『The War Game』にてアカデミー賞・長篇ドキュメンタリー賞を受賞したピーター・ワトキンス監督が手掛けた偽ドキュメンタリー映画だ。

英国人のワトキンス監督は、ドキュメンタリー映画のスタイルを用い、ベトナム戦争に反対するリベラルな考え方を持つ人々を根こそぎ逮捕/懲罰を与える体制側の、暴走する権力の怖ろしさを描いている。しかしそのラディカルな内容と、フィクションとは思えない権力側の暴力行使の描写が、1971年当時、ベトナム戦争を支持し、右傾化していた全米マスメディアから凄まじい攻撃を受けてしまう。公開しようという勇気ある劇場は国内に1館も無く、どのTV局からも放送禁止とされてしまう。以降、本作は全世界で見ることのかなわない封印作品として、その作品名だけが語り継がれてきたのだった。
以下は当時、アメリカのマスメディアから本作に浴びせられた罵倒の言葉の数々である。

●「本作はとても鈍い、頭のイカれた誠意で描かれており、最初のヒステリックな10分間で気づくだろう。完全にマゾヒストの願いや夢を果たすべく作られた映画だ。」
●「悪意に満ちてねじ曲がっている」
●「憎悪のポルノ映画だ」
●「非常に退屈な革命のファンタジーだ」
●「ポリティカルなファンタジー。そこに平和のもとはなく、まったく無思慮に自由が論じられる」

演じたキャストもまたほぼ素人の役者だったが、彼らについても
●「頑固一徹のブタども」●「ファシスト系ネアンデルタール人の詰め合わせ」●「ブタはブタで集まっても自己表現のレベルがあがるものではない」●「悲惨で暴力的な、愚かなブタども」など、
罵倒を通り越した変態的な表現で論じられていたらしい。

右傾化の危機が叫ばれ、安保法案に揺れる2015年の日本の観客に、今から40年以上も前に製作された『懲罰大陸★USA』は、どのように受けとめられるのだろうか?

◆『懲罰大陸★USA』:8/29(土)より新宿シネマカリテにて2週間限定レイトショー。

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執筆者

Yasuhiro Togawa