今週末7月4日(土)よりシアター・イメージフォーラムにて、『ルック・オブ・サイレンス』が公開されるのを記念し、同劇場で『アクト・オブ・キリング 劇場公開版』の再上映が緊急決定。

狂気度MAXの前作から緊迫度MAXの「アイヒマン裁判に匹敵する価値を持つ」第二章へ。
この夏、どちらも必見のドキュメンタリー!

昨年、日本だけでなく世界中で驚異的な大ヒットを記録した『アクト・オブ・キリング』。
60年代のインドネシアで起きた虐殺の実行犯たちが、自分の殺人を再現して映画を作るという前代未聞の手法で、アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門にノミネートされたドキュメンタリーだ。その第二章といえる新作『ルック・オブ・サイレンス』の公開を機に、観客からの強い要望が劇場に寄せられ、このたび緊急レイトショーが決定した。どちらも独立して観ることができる傑作だが、合わせて観れば、さらにその凄さが体験できることは間違いない。

新作『ルック・オブ・サイレンス』は、虐殺で兄を失った主人公が加害者に直接対峙する様をカメラに収めている。これは、いまだに虐殺の当事者が権力の座にあるインドネシアで、「もし戦後半世紀経ってもまだナチスが権力を持っているとして、ホロコーストの被害者が加害者に直接対峙して罪を問うようなもの」(オッペンハイマー監督)という、前作につづき、こちらも前代未聞の試みなのだ。先月来日したオッペンハイマー監督は、「主人公のアディから、加害者に直接会いたいと提案されたが、最初はあまりに危険なので断った。だが被害者たちの“沈黙”をもう終わらせたいというアディの強い思いに触れ、彼を守る25人のチームをつくって撮影した」と語る。前作は意図的に加害者にフォーカスした狂気度MAXの衝撃だとしたら、新作は緊迫度MAXの被害者と加害者の対峙。静かな描写の中に、人間の本性が浮かび上がり、ドキュメンタリー作家の森達也氏は、「罪と罰とは何か。人とはどのような存在なのか。これはアイヒマン裁判に匹敵する価値を持つ作品だ」とコメントしている。

さらに、映画評論家の町山智浩氏は、「虐殺者たちが、我々とまったく変わらない、良心や常識や他人への共感力を持つ小市民であることこそがいちばん恐ろしい」とパンフレットに寄稿するとともに、その恐怖を超えて加害者の前に立った主人公アディについて「アディは復讐したいのではない。赦したいのだ。できるなら。」とコメントを寄せ、前作『アクト〜』にはない「虐殺の過去をどう清算し、どんな未来を築けばいいのか」という問いかけにも触れている。

アカデミー賞ノミネートの前作『アクト・オブ・キリング』から、現在、その「アクト〜」を上回るペースで世界40以上の賞を受賞して来年のアカデミー賞ノミネート確実と評価を得ている新作『ルック・オブ・サイレンス』へ。
この夏、必見のドキュメンタリーをお見逃しなく!

*公開はどちらも7/4より:
『ルック・オブ・サイレンス』12:45 / 14:55 / 17:05 / 19:10
『アクト・オブ・キリング劇場公開版』 21:05 

○『アクト・オブ・キリング 』作品概要
「あなたが行った虐殺を、もう一度演じてみませんか?」
これが悪の正体なのか———。
前代未聞の手法を用いて人間のモラルを揺さぶる、衝撃のドキュメンタリー!!
60年代インドネシアで密かに行われた100万人規模の大虐殺。その実行者は、驚くべきことにいまも“国民的英雄”として楽しげに暮らしている。映画作家オッペンハイマーは人権団体の依頼で虐殺の被害者を取材していたが、当局から被害者への接触を禁止され、対象を加害者に変更。彼らが嬉々として虐殺行為を再現して見せるのをきっかけに、「あなたたち自身で、カメラの前で演じてみませんか」と持ちかけた。映画スター気取りで殺人の様子を詳細に演じてみせる男たち。しかしそれは、彼らにある変化をもたらしていく…。

○『ルック・オブ・サイレンス』作品概要
ヴェネツィア国際映画祭5冠ほか前作を上回るペースで現在40冠獲得!
「あなたはなぜ、兄を殺したのですか———」
常識を覆す被害者と加害者の直接対峙から浮かび上がる
100万人規模の大虐殺に隠された“責任なき悪”のメカニズム。
1965年の軍事クーデター(9・30事件)をきっかけにおこった大虐殺で兄を殺害されたアディ。
オッペンハイマー監督が撮影した、加害者たちが虐殺行為を誇らしげに語る映像を見て、自ら「兄を殺した加害者たちに直接会って、責任を問いたい」と監督に提案。恐怖の中で50年も強いられてきた沈黙を破ろうとするアディ。メガネ技師という職業を利用して加害者に近づくアディ。だが、そこで目の当たりにしたものは———。

関連作品

http://data.cinematopics.com/?p=52335

http://data.cinematopics.com/?p=53603

執筆者

Yasuhiro TogawaYasuhiro Togawa