「ちいさなひとのえいががっこう」(ちいがく)は子どものための映画学校を作るべく立ち上げられた、ボランティアによるサークルです。これまで「おはなしくらべ」などの子ども映画会を過去に58回、また「映画館遠足」を7回企画して実施し、3,300名を超える親子が参加しています。
http://yaplog.jp/eigagakkou/

ちいがくでは映画を通して、その国の文化や社会を知る「映画で世界一周!」シリーズを2013年度より始めました。
3年目に入り、13カ国目となる今回はドイツを取り上げます。古くからの伝統と、近代的な先進国としての顔をあわせ持つドイツは、日本にとっても大変なじみの深い国です。数々の良質なドイツ映画も、継続的に日本で紹介されています。

今回は、児童文学のベストセラー『大どろぼうホッツェンプロッツ』と、その続編の実写劇映画、および短編アニメーションを3日間にわたる特集上映でお届けします。今年の6月4日にちいがくは10周年を迎えました。2005年に行われた第1回上映会の上映作品は、この『大どろぼうホッツェンプロッツ』でした。10年間の活動の原点に立ち返る気持ちも込めて選んだ、この愉快な名作を親子で楽しみましょう。
(10周年の日に寄せたメッセージは、このリリースの最後に掲載しています)

映画を通して原作本にも興味を持ってもらい、映画と本を比べることによって違った面白さを見つけ、夏休みの読書感想文に楽しみながら取りかかる、ひとつのきっかけとなることを期待しています。また、久しぶりにちいがくお得意の「おはなしくらべ」にも短編アニメで挑戦!
期間中には、簡単なコマ撮りアニメーションや、絵が動いて見える原理を学ぶ視覚おもちゃの工作、映画の登場人物になりきる変身工作ワークショップも実施、映画の世界をより深く楽しめるような仕掛けも準備しています。
また、トークイベントの特別講師には様々なメディアで活躍中のマライ・メントラインさんをお迎えして、ドイツの日常や芸術、文化についてお話をしていただきます。
どの角度からも、夏休みの自由研究に役立つヒントがたくさん!

子どもたちはもちろん、親にとっても楽しめるプログラムとなっています。
入場は無料。
ぜひ、この上映会を広く知っていただくために、みなさまのご協力を賜りたく、お願い申し上げます。
詳細については、担当の岡崎( eigagakkou@hotmail.co.jp )までお問い合わせください。

■開催概要

主催:ちいさなひとのえいががっこう
助成:独立行政法人国立青少年教育振興機構(子どもゆめ基金)
後援:杉並区教育委員会
協力:特定非営利活動法人東京フィルメックス実行委員会、図書館流通センター(TRC)
作品提供:都立多摩図書館

日時: 2015年7月18日(土)、19日(日)、20日(月・祝)
    いずれも13:00〜16:30 *入退場自由
会場:杉並区立中央図書館 視聴覚ホール (杉並区荻窪3-40-23)
    →JR中央線、地下鉄丸ノ内線「荻窪」駅南口から徒歩10分
   地図→https://www.library.city.suginami.tokyo.jp/facilities/chuou.html
料金:無料
定員:50名(先着順) *20日の変身工作プログラムは子どものみ、先着30名限定
対象:幼児〜中学生とその保護者
  *大人だけの参加(見学、取材など)をご希望の際はあらかじめご連絡ください。

ブログ:http://yaplog.jp/eigagakkou/
お問い合わせ:ちいさなひとのえいががっこう(担当:岡崎)
   e-mail: eigagakkou@hotmail.co.jp

■上映スケジュール

◎7月18日(土)
 13:00 『大どろぼうホッツェンプロッツ』(97分)
 15:00 ドイツについてのお話(1) 講師:マライ・メントラインさん
 15:30 コマ撮り撮影に挑戦!(60分)
 16:30 終了

◎7月19日(日)
 13:00 『灯台のゆかいななかまたち』(42分)
 13:50 おはなしくらべ『七羽のからす』
       朗読と上映(計60分)
 15:00 ドイツについてのお話(2)
 15:30 視覚おもちゃ工作ワークショップ(60分)
 16:30 終了

◎7月20日(月・祝)
 13:00 『大どろぼうホッツェンプロッツふたたびあらわる』(85分)
 14:50 変身アイテム工作ワークショップ(50分)
 15:40 どろけい@読書の森公園(50分)
 16:30 終了

■上映作品の解説

『大どろぼうホッツェンプロッツ』
(1974年/97分/16mmフィルム/日本語吹き替え/エームック・フィルム)
ある日、カスパール少年のおばあさんが庭先のベンチでコーヒーをひいていると、しげみの中から黒いもじゃもじゃのひげを生やした、ものすごいかぎ鼻の大男が現われました。大男はピストルをつきつけ、おばあさんが大事にしていたコーヒーひきをうばって逃げていったのです。さあたいへん!!この男こそ、かの有名な神出鬼没の大どろぼうホッツェンプロッツなのです……。 カスパールと友だちのゼッペルは、おまわりさんのディンペルモーザー氏と一緒に、ホッツェンプロッツを捕まえる決心をしました。

原作:オトフリート・プロイスラー/監督:グスタフ・エームック/音楽:ピア・ラーベン
出演:ゲルト・フレーベ、リナ・カルステルス、ライナ・バセトウ、ダビッド・フリートマン

『大どろぼうホッツェンプロッツふたたびあらわる』
(1979年/85分/16mmフィルム/日本語吹き替え/エームック・フィルム)
大どろぼうがつかまり、おまわりさんのディンペルモーザー氏はほうびに市長からサイドカー付きのオートバイをもらいました。ところが、市民に平和がもどったのもつかのま。留置場から逃げ出したホッツェンプロッツは、カスパールのおばあさんをゆうかいし、身代金を要求してきました。カスパールとゼッペルは、自分たちの貯金箱をこわしておばあさんを助けにでかけます。ホッツェンプロッツをふたたび捕まえることができるのでしょうか。

原作:オトフリート・プロイスラー/監督:グスタフ・エームック/音楽:ピア・ラーベン
出演:ぺ一ター・カーン、バーバラ・バレンティン、ヴァール・デイビス、ハンス・リヒター

『灯台のゆかいななかまたち』
(42分/16mmフィルム/日本語吹き替え/ヘッタ—・ゲーム)
古い灯台だけがある小さな島に、灯台守のジョナサンが船に乗ってやってきました。積み荷にかくれていた子犬のブクと力をあわせ、灯台をきれいにして、いっしょに住むことになりました。島にはひねくれ者の山羊のグスリーや、なまけ者の黒猫のカーターも住んでいます。ある日、島にたくさんのにわとりがやってきました。島は大にぎわいですが、グスリーは気に入りません。にわとりが生んだ卵をこっそりかくしてしまいますが…。人形アニメーション映画。

原作:ギュンター・フォイステル「ジョナサン」/監督:ヘルガ・マリア・ウーリッヒ
日本語版演出:小柳剛
声の出演:辻村真人、槐柳二、小宮和枝、安原義人、村越伊知郎
第10回モスクワ映画祭ピオニール賞受賞

『七羽のからす』
(1977年/22分/16mmフィルム/日本語吹き替え/デファフィルム)
あるところに7人の男の子がいました。待ちのぞんだ女の子がようやく生まれた日、魔法つかいのおばあさんが男の子を7羽のからすに変えてしまいました。ニーナと名付けられた女の子は、あるとき、からすになったお兄さんたちのことを知りました。小さなつぼに水を入れ、ひときれのパンと小さないすを持ってニーナはお兄さんを探す旅に出ました。神父さん、クラゲや海の王様、太陽や月や星を訪ね、やっとガラスの山にたどり着きました。しかし、門を開けるためのガラスのカギをこわしてしまいました…。グリム童話を基にしたアニメーション。

日本語版演出:秋元良介/お話:落合恵子

◎ドイツについて勉強しよう!
・ドイツって、どんな国?

・ドイツ語であいさつ
…ドイツ語で「こんにちは」「ありがとう」は、どう言うの?簡単なあいさつを覚えて使ってみましょう!
・その他、ドイツという国について、映画を通して楽しく勉強してみましょう!

★★★ マライ・メントラインさん トークイベント ★★★
マライ・メントライン  Marei MENTLEIN プロフィール
シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州キール出身。NHK語学番組 『テレビでドイツ語』『まいにちドイツ語』に出演。早川書房『ミステリマガジン』誌の連載「北緯54.2度の本棚を飛び出す」など、コラム、エッセーを執筆。駐日ドイツ大使館が運営する日本の若者向けのサイトでも独ミステリー紹介コラムを連載中。
→7月18日(土)15時〜 (予定)

★★★ コマ撮りワークショップ ★★★
『大どろぼうホッツェンプロッツ』の中には、不思議な映像の魔法がいっぱい。動かないはずの「モノ」が、生きているように動き出す瞬間を体験しましょう。簡単なアプリや機材を使って挑戦します。
→7月18日(土)15時半〜 (予定)

★★★ おはなしくらべ ★★★
おはなしくらべとは、映画の上映の前に原作の絵本や紙しばいを読み聞かせ、その原作を基に映画化された作品と見くらべてみる遊びです。どこが違ってたかな? 同じだったかな?
クイズのような感覚で、映画も本も、より深く、楽しむことができます。
→7月19日(日)13時50分〜 (予定)

★★★ 視覚おもちゃ工作ワークショップ ★★★
絵が動いて見えるのは、なぜ? 2つの絵が重なって見える?
目の錯覚を利用した、視覚おもちゃ(マジックロール、ソーマトロープ、フェナキスティスコープなど)を作ります。夏休みの自由研究にもぴったり!
→7月19日(日)15時半〜 (予定)

★★★ どろぼうと警察に変身!工作ワークショップ ★★★
大どろぼうホッツェンプロッツの羽根つき帽子と、おまわりさんディンペルモーザーの警察帽子。色画用紙を使って、2つの帽子を作り、大変身! 上手にできたら、図書館の隣にある読書の森公園で、みんなで「どろけい」(けいどろ)遊びをしましょう。
→7月20日(月・祝)14時50分〜 (予定)

■「ちいさなひとのえいががっこう」とは…?
 「映画を勉強しよう!」をコンセプトに、子どもも親も一緒になって映画を楽しめる場を作りたい、とボランティアの有志が集まって活動を始めたサークルです。これまでに「こどもえいがかい」を58回開催してきました。
活動を開始してから10年が経ちました。これからもいろいろな映画上映会で映画を楽しんだり、近くの映画館へ遠足に行ったり、映画の作り方の秘密を知るためのワークショップを企画しようと考えています。
ただいま「ちいさなひとのえいががっこう」では、一緒に活動をしてくれるボランティア・スタッフ(年齢・職業関係なし!)と、一緒に映画を楽しんで観てくれる生徒を募集しています。ブログはhttp://yaplog.jp/eigagakkou/
詳しくは、eigagakkou@hotmail.co.jp (岡崎)までお問い合わせください。

【ちいがく創立10周年〜感謝!】
2016.6.4.記
本日、2015年6月4日は、ちいさなひとのえいががっこうの創立10周年の記念日です。
たくさんの方々に支えていただいたおかげで、ここまで活動を続けられました。
この場で心よりお礼を申し上げます。

先に書いた「たくさんの方々」を思い返すと、まずは上映会に参加していただいた子どもたちを思い出します。
10年間の記録をまとめてみました。58回の上映会に加え、映画館遠足や小学校などへの出前上映会、段ボール映画館などをあわせると、イベントの総数は79回にもなります。また、247本の映画を上映してきました。そこに参加してくださった子どもは延べ1,890名、大人は1,474名。あわせて3,300名を超える親子と一緒に映画を楽しんできました。
準備もままならないままに開催した最初の上映会は、まったく告知もできないままだったので、当然のようにお客様がゼロ。そのことを思えば、この数字はとてもありがたいことだなあ、とあらためて感じます。

ラピュタ阿佐ヶ谷での『月光仮面』遠足では、映画館の暗やみが怖くて途中で出てきてしまった男の子。6年後の段ボール映画館では、率先してするすると木によじ登り、ロープでドームを固定する姿が頼もしく見えました。
入学も卒業も自由な学校なので、子どもたちが成長し、興味や関心を持つ事柄が増え、習いごとや行事で忙しくなると、自然と卒業していきます。「元気かなあ」と思い出すことはあっても、「いまでも映画を好きでいてほしい」とまでは思いません。ただ、机の引き出しからちいがくのシール名札や、映画パスポートが出てきたときに、ちょっとだけでも思い出して、映画館やレンタルショップに足を運んでくれることがあれば、とても嬉しいなと思います。ちいがくの活動は、そのくらいのささやかさがぴったりです。

子どもたちの姿と一緒に、そこにいるお父さん、お母さんたちの姿も思い出します。子どもたちとの接し方もおっかなびっくりで始めた活動だったので、お父さん、お母さんは私たちにとっての「先生」でした。10年前の今日、(子どもたちだけでなく)“親子で”映画を楽しむことを目的にしよう、と創立メンバーで話し合って目的を定めましたが、その直感は間違っていませんでした。メールで送ってくださった、お家に帰ってから子どもたちと話した映画の感想は、ちいがくの活動の原動力でした。

協力の手を差し伸べてくださった方々の顔も浮かびます。「一緒にやりませんか」と声をかけてくださった図書館の方々。お金もフィルムも場所も持たないちいがくにとって、現実的な面でも心の支えでも、とても大きな助けとなりました。行政の常として、担当者が数年で代わっていくのですが、どの方も私たちに親身になって付き合っていただきました。また、活動を始めてわずか半年の、まだ何者でもないちいがくへの支援を決めていただいた子どもゆめ基金は、ここまで活動を続けられる基盤になりました。さまざまなメディアで、活動を取り上げていただいた記者や編集者の方々のおかげで、多くの参加者に活動を知っていただくことができました。時々、実際のちいがくの活動よりも、記事の中の姿の方がとても立派で「そんなすごい内容じゃないのにな…(笑)」と面映く感じることもありましたが、それに見合うように続けていく励みともなりました。小学校や幼稚園やお寺などなど、様々な場所への出前上映会に声をかけていただいた方々にも感謝しています。ともすれば、ふだんの上映会を定期的に続けられるだけで満足しがちになるところを、初めての場所、初めての子どもたちという刺激的な条件に引っ張りだしてくれて、七転八倒しながら乗り越える楽しみも味わいました。

3,300名の親子に、もうひとつ加えなければならない数字があります。延べ数にして490名・回になるスタッフのみなさん。
時には炎天下の段ボール映画館でクラクラになりながら、時にはサンタの扮装やキョンシーメイク、フィルム人間にもなりながら、貴重なお休みの時間を割いてボランティアで参加してくださっています。彼らの活躍なくしては、ちいがくは1回も続けられなかったでしょうし、10年を経たいま、彼らは親子上映会のスペシャリストです。
まだまだ、この他にも感謝を述べないといけない方もいらっしゃいます。本当に有り難うございました。

さて、10年が経ったいま、あらためて「ちいがくはどうなるんでしょうか」と、聞いてみます。
その答えは「たぶん、このまま続くんじゃないでしょうか」。
これからも、新しいことや、面白そうなことにはどんどんチャレンジしたいとは考えていますが、規模を大きくしていくつもりはありません。こつこつと上映会を続けていくことが、唯一、ちいがくにできる「がっこう」らしいことかな、と思います。時間や予算で厳しい時期には少しお休みしたりしながら、牛の歩みで進んでいきます。
こうやって書き出すとマジメに見えますが、実際はやりたい放題、決してお行儀のよいだけの活動ではありません。お札を作ってベビーキョンシーメイクで暴れたり、公園や学校やお寺に段ボールで映画館を作ったり、ジャッキー・チェンを観てカンフーとか、ピーター・ラビットを観てバレエを踊ったり、街頭紙芝居師のおじいちゃんを自転車ごと赤帽で運んだり、世界各国の先生をお招きしたり…考えると、めちゃくちゃですね。
もし、こんな映画が観たい!こういうことがやりたい!という面白いアイディアをお持ちでしたら、いつでも大歓迎です。

7月に10周年を記念して上映会を行います。
この2年あまり取り組んでいる「映画で世界一周!」シリーズのドイツ編として、三連休をたっぷり使った特別プログラム。
ちいがくの第1回上映作品にして、観客がゼロだった『大どろぼうホッツェンプロッツ』をもう一度、今度はたくさんの親子と一緒に楽しみたいな、と思います。その続編の『大どろぼうホッツェンプロッツふたたびあらわる』と、短編アニメーションプログラムも加え、”ちいがくらしい”ワークショップもいくつか考え中!ちいがくの活動に大きなひらめきを生んだ「おはなしくらべ」も久しぶりに挑戦します。
ぜひ、懐かしい卒業生も、新しい入学生も、スタッフ希望の方も、遊びにきてくださいね。

これからも、ちいさなひとのえいががっこうをよろしくお願いいたします。

2015年6月4日 ちいさなひとのえいががっこう オカザキくん

執筆者

Yasuhiro Togawa