1971年に打ち出した成人映画のレーベル「日活ロマンポルノ」に関して、一部作品が映倫の再審査を受け<R15+指定>と審査されました。

 今年没後20周年を迎え、シネマヴェーラ渋谷で実施された特集上映も好評だった神代辰巳監督作品の傑作二作品『恋人たちは濡れた』(73)『四畳半襖の裏張り』(73) が、映倫の再審査によって「R15+」指定作品という審査結果がおりました。
 ロマンポルノ製作開始当時には「一般映画」か「成人映画」しかなく、1998年に「成人映画」が「R-18」と改称されて以降は、ロマンポルノ作品群はそのまま「R-18」へ移行。現在の審査基準で審査を行ったところ、今回上記の二作品が42年の歳月を経て、「R15+」作品と認定されました。

 そもそも日活ロマンポルノの絡みシーンは、花瓶などの障害物を置くというようなカメラアングルを工夫した巧みな撮影スタイルで、見えそうでみえないというのがお約束。製作開始当時のセンセーショナルな立ち上げから、ポルノという言葉が一人歩きしていましたが、劇場公開のために映倫審査をうけた映画作品で、全て演技です。監督たちに愛され数々の作品に出演した俳優たちは、リアルな演技や表現が求められ、それだけの資質を備えていたといえます。

 今回『恋人たちは濡れた』(73)『四畳半襖の裏張り』(73) の二作品が「R15+」と審査されたことに関しては、決して、現在の映倫の審査基準が甘くなっているというわけではなく、ロマンポルノがもつエンターテイメント性が再評価されていることや、ロマンポルノから日本映画界を代表する監督・俳優が輩出されたことなどが改めて認識されたことが一因していると考えます。その時代の風俗や文化を感じる映画作品として多くの方に観てもらうためにも、日活は、今後もロマンポルノ作品の再審査を依頼していきます。

<映倫区分、表記の変遷>
1976年以前 「一般映画」「成人映画」の2つの区分のみ
1976年〜 「一般映画」内に「一般映画制限付[R指定]」(中学生以下は成人保護者同伴が必要)が加わる。
      「成人映画」は「成人指定」に。
1998年〜 「一般映画」に「PG-12」が加わり、R指定映画は「R-15」に、「成人指定」が「R-18」に表記変更。
2009年〜 「一般映画」が「G」に、ほかの表記も「PG12」、「R15+」「R18+」に変更。

日活ロマンポルノとは?
「日活ロマンポルノ」は、日活が1971年に打ち出した当時の映倫規定における成人映画のレーベル。「10分に1回絡みのシーンを作る、上映時間は70分程度」 などの一定のルールと、製作条件を守れば比較的自由に映画を作ることができたため、チャンスを与えられた若手監督たちは限られた条件の中で新しい映画作りを模索し、作品への情熱と、助監督として培ってきた技術と経験で、さまざまな「性」の表現に立ち向い、男と女の生き様を深く美しく描くことを極めてきました。製作終了した1988年までの17年間に約1,100本もの作品を継続して公開し続けた結果、
映画史において、最もセンセーショナルな作品レーベルとして、現在も国内外で高く評価されています

執筆者

Yasuhiro Togawa