■19世紀末のフランスに、もうひとつのヘレン・ケラー物語があったことを知っていますか?
この度、三重苦で生まれた女性マリー・ウルタンと、彼女を教育したシスター、マルグリット、実在したふたりの女性による真実を描いたフランス映画「MARIE HEURTIN」(原題)の邦題が、「奇跡のひと マリーとマルグリット」に決定し、6月に日本公開が決定しました。

裕福な家庭に生まれたが、後天的な病気によって視力・聴力・言葉を失いサリバン先生をはじめ複数の教師から教育を受けたヘレン・ケラーの物語とは異なり、本作のヒロインであるマリーは、生まれつきの三重苦であり、彼女に教育したのは献身的な修道女、マルグリットただ一人だけであった・・・。不治の病を抱えながら、人として生きる喜びと尊厳、そして死の意味もマリーに教えたマルグリット。母のように惜しみなく愛を注ぎ、知識を分かち、命をつなぐ——。彼女が身をもってマリーに示したのは、人としての営みそのものだった。マルグリットの愛情あふれる教育で物には名前があることを知り、たくさんの感情を得ていくマリー。

■見出された“奇跡の新人”アリアーナ・リヴォアール。女優たちの見事なまでの競演!
マリーを演じたのは、自身も聴覚にハンディキャップを抱えるアリアーナ・リヴォアール。彼女は、マリー役をろう者もしくは盲者の少女に演じてもらおうと考えていた監督のジャン=ピエール・アメリスによって見出され、本作で映画デビューした期待の新星で、前半部分では野性児のようなマリー、言葉を知った後半部分ではいきいきと表情豊かなマリーを、それぞれ見事に演じた。この映画を観た観客たちがその演技に拍手喝さいを送ったことは言うまでもない! 物語の舞台となっているのは、フランス・ポアティエ地方にあるラルネイ聖母学院で、1世紀半を経た今も、耳が不自由な人たちのための施設として現存している。1895年、10歳の時にやってきたマリーは、ゲーム、縫い物や編み物のほか、読み書きも覚え、その後もここにとどまって後輩たちを指導したという。劇中で見られる修道女たちの素朴だが清潔な服、自給自足のつましい食生活など、まったく無駄のないシンプルなその暮しぶりは、マルグリットの教えと同様、人として生きることの真の豊かさとは何か? を現代に生きる私たちに語りかけてくれる。

■美しい心を残し、早逝してしまったシスターマルグリットから受け取ったもの
マルグリットの死後、遺志を受け継いだマリーが、「いつもあなたを想っている」とマルグリットの魂に語りかけるラストシーンでは、彼女の笑顔がもたらす希望の光に、誰しもが心を打たれずにはいられない。
まだ日本人にはほとんど知られていない、19世紀末、フランス西部ポアティエ地方の美しい村に実在したふたりの女性が紡ぐ感動のトゥルー・ストーリーが、遂に日本公開となります!

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執筆者

Yasuhiro Togawa