静かなる狂気の人間ドラマ。ベネット・ミラー監督最高傑作!
1996年 デュポン財閥御曹司によるレスリング五輪金メダリスト射殺事件を映画化

 故フィリップ・シーモア・ホフマン主演『カポーティ』(05)では作家トルーマン・カポーティを、ブラッド・ピット主演『マネーボール』(11)では革新的球団運営で野球界の常識を変えたGMを、これまで実在の人物と事件を丹念に描いてきたベネット・ミラー監督。最新作は1996年に全米を震撼させたデュポン財閥御曹司によるレスリング五輪金メダリスト射殺事件を映画化。孤独、葛藤、富と名声、心の暗部でつながれた大富豪とレスリング金メダリストの病的ともいえる心理を鮮烈に描き、見事カンヌ国際映画祭監督賞を受賞、先日、日本時間12月11日に発表された米アカデミー賞最大の前哨戦とも言われる第72回米ゴールデン・グローブ賞では「作品賞」「主演男優賞(スティーブ・カレル)」「助演男優賞(マーク・ラファロ)」の3部門にノミネートを果たした。とりわけ主演男優賞にノミネートされ、これまで『リトル・ミス・サンシャイン』などのヒットコメディで活躍してきたカレル自身初のシリアスな怪演、さらには存命するメダリストの弟を演じたテイタムの鬼気迫る熱演は、共に批評家から大絶賛を受け、ダブルでの米アカデミー賞ノミネートが有力視されている。また助演男優賞にノミネートされ『はじまりのうた』(2/7公開)の公開が控えるマーク・ラファロの変貌ぶりも話題となっている。

「演じることは挑戦であり少し怖くもあった」カレルの過去作で最も“ダーク”なキャラクター
ジョン・デュポンの狂気が迫りくる予告編

 先日発表となった「第72回米ゴールデン・グローブ賞」のノミネーションを受けて、自身“初”となる「主演男優賞ノミネート」についてスティーブ・カレルは、「これまでの映画の中でも最もダークで、デュポンを演じることは挑戦であると同時に少し怖くもあった。でも、怖いと感じることは挑戦すべきタイプの事柄だと考えるようにしているんだ。経験から多くを学べるからね。そしてそういったことにトライするには、より大きなリスクが伴うものさ」と語る。

 今回、ゴールデン・グローブ賞ノミネートが発表となった日、「今晩はピザを注文するかもね。それが僕らのパーティーさ」とノミネートのお祝いをお茶目に語ったスティーブ・カレル。そんなコメントからは想像出来ない、彼自身にさえ演じることが「怖かった」と言わしめた、本作のスティーブ・カレル史上最も“ダーク”なキャラクターへの挑戦。第72回米ゴールデン・グローブ賞の受賞式は日本時間の年明け2015年1月12日(月・祝)に開催されるが、ノミネートに続き、スティーブ・カレル史上初となる「主演男優賞」受賞はもたらされるだろうか。その可能性を予告編を通してアナタの目で確かめてみてほしい。

予告編::http://youtu.be/UK98oxI09ZY

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執筆者

Yasuhiro Togawa