大人も子どもも共有できる優れた作品に送られる文学賞「第28回坪田譲治文学賞」、2013年本屋大賞第4位に輝き、10代からシニアまで幅広い世代の人びとの心を掴んで大きな話題を呼んだ小説「きみはいい子」(著:中脇初枝〈ポプラ社刊〉)が、『そこのみにて光輝く』でモントリオール世界映画祭最優秀監督賞を受賞した呉美保監督によって映画化され、2015年初夏、テアトル新宿ほか全国にての公開が決定しました。幼児虐待、虐待の連鎖、ネグレクト、いじめ、学級崩壊——。子どもたちにまつわる現代の問題を孕みながらも、「ひとがひとを愛するということ」を描ききった傑作が誕生しました。すべての子ども、そして、かつて子どもだったすべての人に贈る、珠玉の一本です。
主演は、昨年の『横道世之介』でブルーリボン主演男優賞に輝き、来年1月より始まるNHK大河ドラマ「花燃ゆ」では高杉晋作役に挑むなど、いまもっとも注目を集める俳優、高良健吾。担任をうけもつクラスを学級崩壊させてしまう新米教師を演じます。そして、『そして父になる』でわが子をとり違えられた母親の戸惑いと苦悩を繊細に表現して高く評価された尾野真千子が、本作では一転、わが子に虐待を繰り返し、自身もかつて親に虐待された過去をもつ母親を演じます。
このたび公開決定のお知らせと併せて、そのほかのキャストを発表させていただきます。
尾野真千子演じる母親のママ友に、『そこのみにて光輝く』で体当たりの演技を披露し、新境地を拓いたと高く評価された池脇千鶴。そして、高良健吾演じる新米教師の先輩役に、同じく『そこのみにて光輝く』で地元を牛耳る土建屋を残忍に演じきって大きな注目を集めた高橋和也が扮し、ともに『そこのみ〜』に続いての呉美保監督作品参加となります。また、家族を亡くした独居老人・あきこ役には、「フランダースの犬」「花の子ルンルン」などの名作アニメで親しまれたベテラン声優、喜多道枝が扮して、その優しさあふれる声で作品にあたたかみを与えているほか、あきこと交流する児童の母親役を演技派・富田靖子が演じ、不安を抱えながら子育てする親の脆さと強さを圧倒的な説得力で体現しています。さらに、NHK「ぼんくら」、『おおかみこどもの雨と雪』の加部亜門が富田靖子の息子に扮し、難役を見事に演じています。
そのほかにも、『ドライブイン蒲生』『福福荘の福ちゃん』など話題作への出演が続く黒川芽以、大劇場から気鋭の劇団まで様々な舞台で活躍し、大根仁演出ドラマ「リバースエッジ」等でも個性際立つ演技で注目を集める内田慈が出演するなど、この作品がもつ豊かな物語性を象徴するような、話題性と実力、個性を兼ね備えた素晴しいキャスティングが実現しました。

◆呉美保監督からのコメント
新しい映画が完成しました。これまで、ひとつの作品でひとつの家族を描いてきましたが、今回は、ひとつの作品でいくつかの家族を描いています。文字通り、老若男女、さまざまな人が出てきます。
デビューしてからずっとご一緒したかった高良健吾さん、気が合いそうだと片思いし続けてきた尾野真千子さん、
まさかご一緒できるだなんて憧れの富田靖子さん、柔らかな声でしあわせを運んでくれる喜多道枝さん、前作『そこのみにて光輝く』で心掴まれまったく離してくれない池脇千鶴さん、笑顔ひとつで善にも悪にもなれる恐るべし高橋和也さん、その他、たくさんの力ある役者さんに作品を彩っていただきました。4本目の映画で、またひとつ挑戦できた気がします。

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執筆者

Yasuhiro Togawa