驚くほどに美しいモノクローム映像。心ふるえる音楽。
歴史上初めてのジプシー女性詩人を描いた叙事詩

2013カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭スペシャル・メンション
2013バリャドリッド国際映画祭監督賞・男優賞・青年審査員賞
2013グディニャ国際映画祭助演男優賞・メイキャップ賞・音楽賞
2013テサロニキ国際映画祭観客賞(オープン・ホライズン・セクション)
2014イスタンブール国際映画祭審査員特別賞
2014ポーランド映画賞 楽曲賞・撮影賞・美術賞
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ポーランド映画、「Papusza(原題)」が『パプーシャの黒い瞳』の邦題で、2015年4月4日より、岩波ホールほか全国順次公開されることが決定しました。

ポーランド映画といえば、人口は日本の3分の1ほどの小国ながら、古くはアンジェイ・ワイダ、ロマン・ポランスキー、クシシュトフ・キェシロフスキという数々の巨匠を輩出。今世紀に入ってからも『アンナと過ごした4日間』が日本でもヒットしたイエジー・スコリモフスキが映画ファンに高い人気を誇り、来年のアカデミー外国語映画賞では『イーダ』が本命視され、12月日本公開の『幸せのありか』も世界的に注目されるなど、今やヨーロッパきっての映画大国だ。

そのポーランドから、知られざる名匠クシシュトフ・クラウゼの傑作『パプーシャの黒い瞳』がついに日本にやってくる。

クラウゼ監督は、これまで日本では2004年製作の『ニキフォル 知られざる天才画家の肖像』が2006年に劇場公開されたのみだが、ポーランド映画ファンならすでにその実力はおなじみ。1988年の初長編がポーランドで最も重要な映画祭グディニャ・ポーランド映画祭で新人監督賞を受賞以来、『借金』(99)、『救世主広場』(06)で二度もグランプリに輝き、その他すべての作品が世界各国の映画祭で受賞を果たしている、まさに名匠だ。
 現在開催中の「ポーランド映画祭2014」では、初期の傑作『借金』が上映されているが、巨匠スコリモフスキが強く推す名作中の名作だ。

 来年4月に公開となるその最新作『パプーシャの黒い瞳』は、クラウゼ監督が『ニキフォル〜』では共同脚本、『救世主広場』からは共同監督でコンビを組んでいる妻ヨアンナ・コス=クラウゼとの共同監督作。ポーランドを旅するジプシーの一族に生まれ、歴史上初めてのジプシー女性詩人となったブロニスワヴァ・ヴァイス(1908-1987)の生涯を描いている。映画のタイトルにある「パプーシャ」はジプシーの言葉で「人形」を意味する彼女の愛称である。この映画の魅力は、まず何と言ってもその驚くべき美しさのモノクロームの映像。わけても大勢のジプシーがキャラバンで移動する姿を捉えたロングショットは言葉には表せないスケールと美しさで理屈なしに目を奪われる。またオペラ曲“パプーシャのハープ”や、パプーシャの一族が奏でるジプシー音楽など音楽の素晴らしさも圧倒的だ。パプーシャの生涯を描きながら、同時に第二次世界大戦の前後にジプシーたちが直面した激動のポーランド現代史を重ねあわせるポーランド映画の傑作、ぜひ4月の公開を楽しみにしてほしい。なおクラウゼ監督の旧作『借金』は「ポーランド映画祭2014」(シアター・イメージフォーラム)で、この後12/13(土)19:00、12/19(金)19:00の上映が予定されている。

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執筆者

Yasuhiro Togawa