ジェーン・ホーキング著『Travelling to Infinity: My Life with Stephen』の映画化である本作。理論物理学者の立場から宇宙の起源の解明に挑み、現代宇宙論に多大な影響を与えたスティーヴン・ホーキング博士。ニュートンやアインシュタインと並ぶ天才と称される彼は、ALS(筋萎縮性側索硬化症)のハンデを負いながら最先端の研究を精力的に行い、講演活動や執筆活動へ意欲的に取り組む「車椅子の科学者」として知られています。しかし、そんなホーキング博士の偉業が、ひとりの勇気ある女性によって支えられていたことはあまり知られていません。本作は、その知られざる実話にスポットを当てたヒューマン・ラブストーリーです。

ホーキング博士を演じるのは、『レ・ミゼラブル』で自由主義者の青年マリウスを演じたエディ・レッドメイン。徐々に身体中の筋肉が衰える難病ALS(筋委縮性側索硬化症)に侵されていく難役を熱演し、新境地を開いています。体の自由が奪われていく過程を、段階的にリアルに見せる渾身の役作りは絶賛の嵐!またホーキング博士を献身的に支える妻ジェーン役には、『アメイジング・スパイダーマン2』出演のフェリシティ・ジョーンズ。余命2年と宣告を受けたホーキング博士との結婚を選び、希望を持ち続け共に困難を乗り越えようとする強い女性を好演しています。
監督は、ビルの谷間を綱渡りする大道芸人にスポットを当てた『マン・オン・ワイヤー』でアカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を受賞したジェームズ・マーシュ。ホーキング夫妻の人生の節々に、ブラックホールや時間といったホーキング博士の研究テーマをシンクロさせた演出が、作品をより味わい深いものにしています。

先日、アカデミー賞の前哨戦とされるサテライト賞において、作品賞・主演男優賞(エディ・レッドメイン)・主演女優賞(フェリシティ・ジョーンズ)・脚色賞・撮影賞の5部門にノミネートされている本作。特に、エディ・レッドメインはアカデミー主演男優賞最有力候補との呼び声も高く、期待は高まります。
希望を失わず、困難を乗り越えようとした夫妻の葛藤や苦悩のエピソードに誰しもが共感し、涙せずにはいられない映画『博士と彼女のセオリー』に是非、ご期待ください。

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執筆者

Yasuhiro Togawa