『嘆きのピエタ』(12)、『映画は映画だ』(08)など、これまでセンセーショナルな話題作を振りまいてきた鬼才キム・ギドクが関わった映画が3本公開される。

映画ファンなら、キム・ギドクの名前を知らないものはいないだろう。30歳の時にパリに渡り、3年間路上画家として過ごした後、93年に映画業界に飛び込んだ。その後、『鰐〜ワニ〜』(96)で映画監督デビュー。暴力や性といった過激なテーマと社会風刺を織り込み、誰にも真似できない作風で韓国でも物議をかもしてきた。2004年には『サマリア』でベルリン映画祭銀熊賞(監督賞)、同年『うつせみ』でヴェネチア国際映画祭銀獅子賞(監督賞)、 2011年『アリラン』でカンヌ国際映画祭「ある視点」賞、そして2012年『嘆きのピエタ』ではヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞するなどその受賞歴は輝かしく、まさに韓国の映画監督代表である。

そんな鬼才が製作・脚本に関わったのが、11月15日(土)に公開されるMBLAQイ・ジュンが映画初主演作『俳優は俳優だ』。端役俳優から躍トップスターに上り詰めた男が、そこから再び転落する過程を演劇の舞台と現実世界の境界を行き来するユニークな構成で描き出し、1人の俳優の成長と挫折を通して人間本来の欲望を赤裸々に映した『映画は映画だ』に続く、センセーショナルな話題作。人気アイドルグループMBLAQイ・ジュンが映画初主演にして大胆なベッドシーンを見事に演じ切ったことも話題となっている。

さらに製作・脚本に名を連ねた作品が現在大ヒット公開中の映画『レッド・ファミリー』。仲の良い理想の家族を演じる北朝鮮スパイによる疑似家族と、喧嘩の絶えないながらも偽りのない本音と感情をぶつけ合う韓国人家族。北朝鮮スパイの疑似家族たちは次第に韓国人家族たちに心を動かされ、スパイという任務と自身の人生に疑問を感じ始める。そんな中、予期せぬ失態により疑似家族たちは辛いミッションが指示されて・・・。
斬新な設定と全く予期せないストーリは観客を圧倒、さらに感動の渦に巻きこみ、2013年の第26回東京国際映画祭・観客賞を受賞した話題作である。

そして満を持して監督したのが12月6日(土)に公開される『メビウス』。
本作は一切のセリフが排除され、さらにその過激な内容から日本でもギリギリR18指定で公開されることになったキム・ギドク史上、最も過激で壮絶な問題作。両親と息子の3人で暮らす上流家庭。夫の不貞に気付いた妻は、嫉妬に狂い、夫の性器を切り取ろうとしたが失敗。その矛先を息子に向け、家を飛び出した妻。夫と息子は何とか再生の道を歩もうとするが、妻が戻ってきた事により、さらに破滅へと突き進んで行く。

激しく際どい描写も多いながらも、社会性のあるストーリーで観る者を魅了するキム・ギドク。改めて、この秋にキム・ギドクの鬼才ぶりに、ぜひ注目してほしい。

映画『俳優は俳優だ』は11月15日(土)よりシネマート六本木ほかロードショー。

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執筆者

Yasuhiro Togawa