映画『薄氷の殺人』未解決の連続バラバラ殺人事件と美しき謎の女—松本清張を彷彿とさせるサスペンスの傑作、予告編解禁!!
台湾・金馬奨2014 最多8部門ノミネート!
【作品賞・監督賞・主演男優賞・主演女優賞・脚本賞・撮影賞・編集賞・美術賞】
本年度ベルリン国際映画祭にて金熊賞(作品賞グランプリ)&銀熊賞(主演男優賞)の2冠に輝いた中国映画『薄氷の殺人』(原題:「白日焔火」 英題:「BLACK COAL, THIN ICE」)が、2015年1月10日より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町他にて全国順次公開となります。本作の予告編が完成しました。1994年から2004年の5年に渡って発生した異様な連続バラバラ殺人事件。この事件の真相に迫る元刑事の男と、すべての犠牲者につながる美しき謎の女。「疑惑の女」は男を破滅させる悪女なのか、それとも・・・。
ベルリン国際映画祭でグランプリ&男優賞をダブル受賞!
アジアの新たな才能に世界が驚嘆したクライム・サスペンス
2014年の第64回ベルリン国際映画祭、世界中からその会場に集った業界人やジャーナリストは、アジアの新たなる才能が放ったクライム・サスペンスに熱狂の拍手を贈った。ウェス・アンダーソン監督作品『グランド・ブダペスト・ホテル』(審査員特別賞)、リチャード・リンクレイター監督作品『6才のボクが、大人になるまで。』(監督賞)といった強力なライバルを抑え、中国の新鋭監督ディアオ・イーナンの長編第3作『薄氷の殺人』がコンペティション部門の最高賞たる金熊賞と男優賞をダブル受賞したのだ。その先鋭的なオリジナリティに満ちあふれ、観る者をめくるめく現実と悪夢の狭間へと誘うノワールな映像世界は、『殺人の追憶』のポン・ジュノ、『罪の手ざわり』のジャ・ジャンクーらに続く並外れた大器の登場を予感させる。
物語は1999年、中国の華北地方で発生したバラバラ殺人の謎をめぐって展開していく。ひとりの男の切り刻まれた死体の断片が、6つの都市にまたがる15ヵ所の石炭工場で次々と発見されるという世にも奇怪な事件。私生活に問題を抱えた刑事ジャンが捜査を担当するが、容疑者の兄弟が逮捕時に抵抗して射殺されたため、真相は闇の彼方に葬られてしまう。そして2004年、しがない警備員となったジャンは、5年前と似た手口のふたつの殺人事件を警察が追っていることを知り、独自の調査に乗り出す。被害者たちは殺される直前、いずれも若く美しいウーという未亡人と親密な仲だった。それは単なる偶然なのか、それともウーは男を破滅に導く悪女なのか。そしてジャンもまた、はからずもウーに心を奪われていく……。
未解決の連続猟奇殺人事件。
事件の闇に迫る、元刑事の男。すべての犠牲者につながる、美しき謎の女—
心身共に傷を負った孤独な元刑事を主人公にした『薄氷の殺人』は、一見オーソドックスなミステリー劇として進行しながらも、ジャンル映画の枠には収まりきらない異形のスリルをみなぎらせていく。中国の地方都市を舞台に、雪に覆われた屋外スケート場などの風景を独特のカメラワークで捉え、大胆なリズムの編集を施した映像には、そこはかとない虚無感や緊張感が混在し、観る者の感性を刺激してやまない。撮影前に『第三の男』『黒い罠』といったフィルムノワールの名作を参照したというディアオ・イーナン監督のシネフィル的なセンス、そして経済発展が目覚ましい大都市とはまったく異なる時間が流れる中国北部の現実を見すえた鋭い眼差しが、生々しいリアリティと得体の知れない不条理性が渦巻く斬新なヴィジュアルに結実した。
また主人公ジャンと“宿命の女”ウーが織りなす、危ういまでに魅惑的なラブ・ストーリーからも目が離せない。生きる目的を失って自暴自棄となり、未解決事件の不気味な闇に囚われていく男。すべての被害者と関係を持ちながらも多くを語らず、はかなげな魔性の色気を漂わせる女。そんな決して惹かれ合ってはならない男女が行き着く果てには、いかなる衝撃的な運命が待ち受けているのか。主演は『戦場のレクイエム』『ライジング・ドラゴン』などで活躍するリャオ・ファンと、台湾=フランス合作映画『藍色夏恋』で鮮烈デビューを飾り、今や中華圏を代表するトップ女優へと成長を遂げたグイ・ルンメイ。ふたりが体現する哀愁、官能、狂気をまとった罪深き愛のかたちは、ただならぬ凄みを発散し、観る者の胸をざわめかせ続ける。
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執筆者
Yasuhiro Togawa