2003年、カナダのトロントにおいて、ある野球チームが最高の名誉であるカナダ野球の殿堂入りを果たした。
そのチームの名は———“バンクーバー朝日”。
戦前のカナダ・バンクーバーで、差別や貧困の中にあってもフェアプレーの精神でひたむきに戦い抜き、日系移民に勇気と誇り、そして希望を与え、さらには白人社会からも賞賛と圧倒的な人気を勝ち得た “バンクーバー朝日”。伝説の野球チームの創設100年となる今年、実際の記録をもとに、戦前の日系移民の壮大なドラマを描きだす映画「バンクーバーの朝日」が公開されます。

先日、本作は、第33回バンクーバー国際映画祭(VIFF)(9月25日〜10月10日)【特別招待作品(ガラプレゼンテーション)部門】に正式招待され、ワールドプレミア上映を実施。妻夫木聡、亀梨和也、そして石井裕也監督は同映画祭の「バンクーバーの朝日」上映にあわせて現地を訪れ、現地の日系人やカナダ人から熱烈な歓迎を受けました。本編上映後には地元・バンクーバーの観客からスタンディングオベーションが湧き起こるなど、現地の方々にも感動の様子で受け入れられた本作ですが、現地時間10月10日(金)、VIFFで最も観客から支持を得た作品におくられる「観客賞(Rogers People’s Choice Award)」を受賞いたしました。

世界65カ国から350作品以上が集まった本年度のバンクーバー国際映画祭。
オープニング作品には、第86回アカデミー賞にてマシュー・マコノヒ—が主演男優賞、ジャレット・レトが助演男優賞を獲得した「ダラスバイヤーズクラブ」のジャン=マルク・ヴァレ監督最新作「Wild」を上映するなど、世界各国から良質な作品が集まり上映されるなか、「バンクーバーの朝日」が最も観客の支持受けた作品として栄誉ある賞を獲得することができました。
昨年は、福山雅治が主演した「そして父になる」(是枝裕和監督)が同賞を受賞しており、2年連続で日本の作品が観客賞に選ばれることとなっています。

【バンクーバー国際映画祭】
バンクーバー国際映画祭は1982年よりカナダの都市バンクーバーで開催されている、北米で最大規模の国際映画祭の1つ。国内外の映像作品を紹介し、北米の映画産業活性化の一助となっています。また、東アジア作品の発掘と育成にも力を入れており、最新のアジア映画を紹介する【ドラゴン&タイガー部門】があることも特徴のひとつです。この【ドラゴン&タイガー部門】を含め、当映画祭への石井裕也監督作品の出品は今回で5回目。現地にも馴染みのある石井監督の最新作がバンクーバーを舞台にした作品であるという点でも注目が集まっていました。
同映画祭の観客賞は映画業界の中でも注目度が高く、2011年は、第84回アカデミー賞で外国語映画賞を受賞したイラン映画「別離」、12年は第65回カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞ほか3冠に輝いた「偽りなき者」が、同賞を受賞しています。

【石井裕也監督 バンクーバー国際映画祭(VIFF)出品作品情報】
『剥き出しにっぽん』 (2007年 第27回VIFF【ドラゴン&タイガー部門】出品)
『川の底からこんにちは』 (2010年 第30回VIFF【ドラゴン&タイガー部門】出品)
『ハラがコレなんで』 (2011年 第31回VIFF【ドラゴン&タイガー部門 ワールド・ガラ】出品)
『舟を編む』 (2013年 第32回VIFF【ドラゴン&タイガー部門】出品)

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執筆者

Yasuhiro Togawa