恋人までの距離(ディスタンス)』から始まるビフォア・シリーズで知られるリチャード・リンクレイター監督最新作にして、最高傑作との呼び声も高い映画『6才のボクが、大人になるまで。』(原題:『Boyhood』)が11月14日(金)より公開となります。

2014年2月、第64回ベルリン国際映画祭で上映されるやいなや世界を驚かせた『6才のボクが、大人になるまで。』。同映画祭でリンクレイター監督に2度目の監督賞(銀熊賞)をもたらした本作は、6歳の少年メイソンとその家族の変遷の物語を、同じ主要キャストで12年に渡り撮り続けた画期的なドラマです。これまでどんな映画作家も試みたことのない斬新な製作スタイルと、歳月の力を借りながら少年の成長の過程を画面に焼き付けていく、みずみずしい作風が高い評価を受け、米映画評集計サイトのRotten Tomatoesで、驚異の高評価100%を獲得。「21世紀に公開された作品の中でも並外れた傑作の1本」(NYタイムズ)と評される、映画史に残るマスターピースです。

あどけない少年から凛々しい青年へと成長していくメイソンを演じたのは、12年前にリンクレイターがオーディションで見出した逸材、エラー・コルトレーン。さらに、メイソンの母親役のパトリシア・アークエット、父親役のイーサン・ホーク、姉役のローレライ・リンクレーターも、12年に渡りそれぞれの役の変化と成長を演じきりました。

本作の中で最もカッコいいシーンの一つとされるのが、父が15歳の誕生日を迎えた息子・メイソンにユニークな誕生日プレゼントを渡す場面。「ブラック・アルバム」という名のこのプレゼントは、『6才のボクが、大人になるまで。』のような映画にはピッタリのリンゴ・スターの「想い出のフォトグラフ」からジョージ・ハリスンの「オール・シングス・マスト・パス」までを網羅した、ビートルズのソロ楽曲の中から名曲を揃えたコンピレーションCDで、劇中ではその内容まで明かされることはありません。
そのため、CDはただの小道具で、全曲目は実際に存在しないのではないかと言われていました。その疑問にリンクレイター監督は「実在します、間違いなく。少なくとも、流通することのない海賊版が存在するのと同じくらいリアルなものが。」と答えており、今回、そのトラックリストが公開されました。

少しでもビートルズのファンであるか、もしくは現代のポップミュージックのファンならば、おそらく人生のある時期に、このミックステープのようなアルバムを自身で作成したことがあるはず。本作では、このような音楽や、メイソンがいじるゲーム機、ハリー・ポッター・シリーズの巻数などサブカルチャーの力を借りて時代の流れを表現。
このブラック・アルバムは、イーサン・ホークが実の娘であるマヤのために作ったものだそうで、劇中では12年間息子を演じるメイソンにこのアルバムとメッセージを贈っています。

メイソンへ
君の誕生日には、お金では買えない、父親から息子にしかあげることのできない家宝のようなものをプレゼントしたかったんだ。これが僕にできる精一杯のことだ。前もって謝っておくよ。—君に贈る「ザ・ビートルズ・ブラック・アルバム」。

父の好きだった音楽が子供に引き継がれ、古いもの、新しいものをめいっぱい吸収し育っていくメイソンの姿は、きっと自分の父や子供、そして家族の姿に重なり、ともに過ごした懐かしい日々を思い出し、涙がこぼれるはず。
映画を観たあとは、お父さんやお母さん、そしてお子さんに一番好きな曲を聞いてみるのもいいかもしれません。

『6才のボクが、大人になるまで。』より
「ブラック・アルバム」トラックリスト

Disc 1:
1. Paul McCartney & Wings, “Band on the Run”
2. George Harrison, “My Sweet Lord”
3. John Lennon feat. The Flux Fiddlers & the Plastic Ono Band, “Jealous Guy”
4. Ringo Starr, “Photograph”
5. John Lennon, “How?”
6. Paul McCartney, “Every Night”
7. George Harrison, “Blow Away”
8. Paul McCartney, “Maybe I’m Amazed”
9. John Lennon, “Woman”
10.Paul McCartney & Wings, “Jet”
11. John Lennon, “Stand by Me”
12. Ringo Starr, “No No Song”
13. Paul McCartney, “Junk”
14. John Lennon, “Love”
15. Paul McCartney & Linda McCartney, “The Back Seat of My Car”
16. John Lennon, “Watching the Wheels”
17. John Lennon, “Mind Games”
18. Paul McCartney & Wings, “Bluebird”
19. John Lennon, “Beautiful Boy (Darling Boy)”
20. George Harrison, “What Is Life”
Disc 2:
1. John Lennon, “God”
2. Wings, “Listen to What the Man Said”
3. John Lennon, “Crippled Inside”
4. Ringo Starr, “You’re Sixteen You’re Beautiful (And You’re Mine)”
5. Paul McCartney & Wings, “Let Me Roll It”
6. John Lennon & The Plastic Ono Band, “Power to the People”
7. Paul McCartney, “Another Day”
8. George Harrison, “If Not For You (2001 Digital Remaster)”
9. John Lennon, “(Just Like) Starting Over”
10. Wings, “Let ‘Em In”
11. John Lennon, “Mother”
12. Paul McCartney & Wings, “Helen Wheels”
13. John Lennon, “I Found Out”
14. Paul McCartney & Linda McCartney, “Uncle Albert / Admiral Halsey”
15. John Lennon, Yoko Ono & The Plastic Ono Band, “Instant Karma! (We All Shine On)”
15. George Harrison, “Not Guilty (2004 Digital Remaster)”
16. Paul McCartney & Linda McCartney, “Heart of the Country”
17. John Lennon, “Oh Yoko!”
18. Wings, “Mull of Kintyre”
19. Ringo Starr, “It Don’t Come Easy”
Disc 3:
1. John Lennon, “Grow Old With Me (2010 Remaster)”
2. Wings, “Silly Love Songs”
3. The Beatles, “Real Love”
4. Paul McCartney & Wings, “My Love”
5. John Lennon, “Oh My Love”
6. George Harrison, “Give Me Love (Give Me Peace on Earth)”
7. Paul McCartney, “Pipes of Peace”
8. John Lennon, “Imagine”
9. Paul McCartney, “Here Today”
10. George Harrison, “All Things Must Pass”
11. Paul McCartney, “And I Love Her (Live on MTV Unplugged)”

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執筆者

Yasuhiro Togawa