この度、「クライマー パタゴニアの彼方へ」が、新宿ピカデリー他絶賛公開中です。山好き、絶景好き、更にはドキュメンタリー好きから圧倒的支持を得ている本作の監督インタビュー動画が本邦初公開。また、主演のアルピニスト、デビッド・ラマと同じくレッドブルアスリートとして活躍する日本人アスリートのコメントも到着致しました。

【トーマス・ディルンホーファー監督インタビュー全文】
—断崖絶壁のセロトーレでの過酷な撮影について教えてください。
パタゴニア遠征では何が起きるか予測できなかった。デビッドの挑戦もそれを私が撮影するのも初めて。それぞれ互いの分野で新人みたいなものだった。あの山を目の前にして初めて大変な挑戦であるということを思い知ったんだ。それでも少しずつ学んだ結果3年目にはコンプレッサールートのフリー化に成功した作品にとって最高の結末を迎えたよ。デビッドはフリーで登頂を果たせたんだ。他にも重大な出来事がいくつも起きた。ボルトが撤去されて撮影チームがルート変更を余儀なくされたりね。映画製作者としては願ってもない展開さ。

—一時は激しく非難もされました、撮影方法について教えてください。
セロトーレの岩壁にボルトとロープを設置した。デビッドがフリーで登るのを撮影するためだ。ボルトはデビッドではなく我々が撮影に使った。安全を確保するためにね。それでもアルピニストの非難を浴びた。セロトーレにボルトを打つのは愚かな行為だ。すでに300本以上設置されてるからね。マエストリの登頂から40年後にボルトを増やしたのは間違いだった。アルプスで山も風景やクライミングを撮影する時は固定ロープとボルトを使う。アイガー、モンブラン、グランドジョラスやダッハシュタインでなら誰も気にしないだろう。だがセロトーレとなると登攀界で警報が鳴り響く。とにかくいい勉強になったよ。失敗を通し多くを学べてよかったと思う。

—登攀界からのバッシングはきつかったですか?
我々の失敗はまだよかったほうだと思う。映画の始めのシーンで主役が崖から転落してたらそれこそ大変なことだろう?でも散々たたかれてかなりキツかったね。我々は登攀界の笑い者にされてたんだ。風刺マンガまでネットに出回ってたよ。“ヤツらのテントを川に投げ込め”だとか。“ジムの壁を登ってろ”などと書かれたりもした。我々はセロトーレのフロー登頂プロジェクトを笑いの種にする機会を与えてしまったんだ。でもいい教訓になったし、もっと重大な事が起きなくてよかった。私は映画製作者として自問することがあるんだ。“冒険は撮影できるものか?”“クライミングしている横に撮影チームがいて平気か?”順調に登っている場合は問題ないかもしれない。でも緊急事態になった時撮影クルーが横にいたら渡された固定ロープを使ってしまうだろう。頼らずにはいられない。“シュレーディンガーの猫”と科学者が呼ぶ思考実験があるが、物語を描く立場からこの実験結果は興味深かったね。何もないところからストーリーを作るよりも観察者がいることで豊かな物語が生まれると思った。

—本作の見どころを教えてください。
私にとっての最大の課題はスリリングで波乱万丈の物語を作ることだった。少しばかり教訓的な部分もこっそり取り入れることでクライミングを知らない人にも興味を持ってもらえるようにした。だが本作は感情的にも非常に訴えるものがある。大笑いするところもシリアスな部分もあるからなるべく大きな視点で楽しんでもらいたい。フリークライミングとは何かを学ぼうとするよりもね。この映画をみた人がフリークライミングの魅力を感じてくれたらうれしいよ。

※監督インタビュー動画
https://www.youtube.com/watch?v=B5JaX1ztufg

【レッドブルアスリート応援コメント】
難攻不落の山にフリークライミングで挑戦ということで、不可能を可能にしていく強い気持ちに感動し、
私も選手としてとても刺激を受けました。
同じレッドブルアスリートであるという誇りを持ち、私も頑張らないと感じました。
—藤本麻子(プロゴルファー)

批判されても無理だと思っても、最後まで諦めないことの大切さをこの映画から改めて教えてもらいました。—徳田耕太郎(フリースタイル・フットボール)

天候などによって登れなかったり、失敗して落ちてしまったり、とても過酷なスポーツだと思いました。それと、失敗を恐れずに色々なことに挑戦しようと思うことができる映画でした。—畠山紗英(BMXレース)

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執筆者

Yasuhiro Togawa