観客に顔を知られることなく、肉体を酷使しながら闘うスーツアクター、アクション映画や特撮ヒーローものにはなくてはならない存在。影の俳優でありながらそんな真のヒーローとも言える人たちに日本映画史上初めてスポットを当てた映画『イン・ザ・ヒーロー』が絶賛公開中です。

誰かの“ヒーロー”である事を願い、伝説のアクションスター、ブルース・リーに憧れながらも、25年間辛酸を舐めまくってきたベテラン・スーツアクター、本城渉(唐沢寿明)。ようやく顔出しで出演する機会が巡ってきながらも、今をときめく新人アイドルの一ノ瀬リョウ(福士蒼汰)に役を取られるわ、離婚した妻の下で暮らす娘には「お父さん俳優じゃないじゃん…」ときつい一言を浴びせられるわと散々。
対する一ノ瀬リョウはハリウッド映画『ラスト・ブレイド』に出演するためオーディションの真っ最中ですが、マネージャーの勧めでヒーロー番組の映画版に登場する新キャラクターを演じることになります。「今更ジャリ番(子供向け番組)なんて、テンション上がらないんだよねー。」と悪態をつくリョウでしたが、その役は元々本城が久々に顔を出して演じるはずだった役。自分が下ろされた役を演じるリョウのやる気のなさに怒りを覚えた本城はその姿勢を叱責しますが、リョウはそんな本城に「スーツアクターって日陰っすよね。」と一言。2人は対立してしまいます。

ベテランとルーキーの対立。そんな2人のドラマが今Twitterで「タイバニっぽい!」と話題になっているのをご存知でしょうか?
“タイバニ”とは、2011年に放映され今なお高い人気を誇るテレビアニメ「TIGER & BUNNY」の略。特殊能力者「NEXT」がヒーローとして平和を守っている近未来を舞台に、デビューから10年以上たった落ち目のベテランヒーロー、通称ワイルドタイガーこと鏑木・T・虎徹と、まるで正反対の性格を持つ生意気なスーパールーキー、バーナビー・ブルックスJr.がコンビを組み、ヒーロー達と共に活躍する姿を描いた物語です。

会社の方針によって無理やりバディを組まされた虎徹とバーナビー。ヒーローとしての誇りや信念を掲げる虎徹と、あくまで“仕事としてのヒーロー”であり、ポイント稼ぎのために働くバーナビーの相性は最悪で、その関係は本城とリョウの2人にも同じことが言えます。昔気質が残る熱いベテランと、クールで現実的なルーキー。最近は時代の変化に伴い、昔以上にその考え方に大きな差がついてきたのかも知れません。
しかし、この2作品に登場するルーキーは、自分の信念に命を賭ける先輩の“熱い姿”を目の当たりにし、そして自分を見捨てずに信頼してくれる仲間の支えを受けたことで、その心に少しずつ変化が生まれます。

すでに『イン・ザ・ヒーロー』を鑑賞した方からは「本城さんと虎徹の馬鹿さと正義感と前向き感、すんげえ被る。」、「映画観たらタイバニを思い出した。友情でもないこの信頼関係の築き方っていいよね。」とタイバニを意識したというツイートがちらほら。それぞれ描くテーマは異なりますが、理解し合えなかった2人が本当の意味でバディになっていく姿は両作品に通ずるものがあるはず。

男同士の師弟関係に萌えるという方は必見!

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執筆者

Yasuhiro TogawaYasuhiro Togawa