2013年、早春の東京を発ち、俳優の海部剛史(かいべつよし)は熊野に向かう。海部の行程は新宮市の神倉(かみくら)神社に始まり、そこから熊野川沿いに本宮大社を経由して十津川村へ。ここは日本で一番大きな村だ。翌朝、玉置(たまき)神社を訪れ、村に戻って資料館で郷土史家から話を聞く。そのあと、果無(はてなし)集落の入り口まで登る。
 旅の3日目に海部は、神倉神社で知り合った西宮司に誘われて神内(こうのうち)神社に集まり、お祓いを受けた後、唐瀧不動明王(からたきふどうみょうおう)様に詣で、大山の修験者道場に向かう。
これはシナリオに書かれたものではなく、半分以上が現地で生まれたリアルな行程である。
この早春の旅を第一楽章にして、第二楽章の四月の旅が計画される。本宮大社で行われる例大祭。この時、海部はエジプト学者と知り合う。二人は現地で偶然知り合ったのだが、西宮司を介して熊野がそんな風に設定してくれたのかもしれない。そして第三楽章—六月の旅。那智の滝、那智大社、青岸渡寺に詣でる海部は、神仏習合思想の熊野のまっただ中で自分の記憶と向き合うのだった。

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執筆者

Yasuhiro Togawa