この度、プレシディオが配給いたします、フィリップ・シーモア・ホフマンが遺した最後の主演作『誰よりも狙われた男』が10月17日(金)よりTOHOシネマズシャンテ他にて全国公開する運びとなりました。

当代最高の名優であり、映画人たちから絶大な尊敬と信頼を得ているフィリップ・シーモア・ホフマン。『カポーティ』ではアカデミー賞主演男優賞に輝き、昨年も『ザ・マスター』での鬼気迫る演技で我々を魅了したばかり。しかし2014年2月2日、N.Y.の自宅で彼の遺体が発見。突然の訃報に世界中が衝撃を受け、打ちひしがれた。まだ46歳の若さだった。

原作は映画化作品『裏切りのサーカス』の大ヒットが記憶に新しいスパイ小説の大家、ジョン・ル・カレが2008年に発表した傑作ミステリー。本作が描くのは“9.11”以降の複雑な今の時代。冷戦時代の東西対立といったわかりやすい構図ではなく、テロ対策を軸にした現代の諜報戦をリアルに描き出しているのが、従来のスパイ物の多くと一線を画す特長である。
ホフマンが演じるのは、ドイツ・ハンブルクの小さなテロ対策スパイチームを率いる男、ギュンター・バッハマン。酒とタバコを手離さず、組織との軋轢と闘いながら、己の信念を貫こうとするバッハマンの孤高の凄みや哀愁、人間臭さを、ホフマンはこれ以上ない深みで絶品の演技を披露している。そして、アカデミー賞®に2度のノミネート経験を持つウィレム・デフォー、ゴールデングローブ賞®受賞経験を持つロビン・ライト。さらに人気女優レイチェル・マクアダムスなど、ハリウッドを中心に活躍する名うての俳優たちが集結した。
監督は『コントロール』『ラスト・ターゲット』のアントン・コービン。スタイリッシュな映像感覚と、伏線に伏線を重ねた繊細なストーリーテリングでル・カレの世界を独自に昇華し、知的で高品質のエンターテイメントに仕立てた本作は彼の最高傑作と言えるだろう。

予告編::http://youtu.be/D6vbUXVe6Vc

このほど解禁となった注目の本予告では2001年9月11日のテロから10年以上が経過したドイツ・ハンブルクを舞台に暗躍するスパイ活動の実情の一部が明らかとなる。テロリストたちが住みつき、悪事を企んだこの街では、今もなお厳戒態勢が敷かれている。夕暮れ時、髭に覆われ汚れたバックパックを抱えた若者が1人、エルベ川から突然姿を現し、ある監視グループのカメラに映る。その監視グループとは酒浸りでチェーンスモーカーのギュンター・バッハマン(フィリップ・シーモア・ホフマン)が率いるスパイチームだ。「奴を餌に、より大きな獲物を釣る」と、言葉を発するバッハマンの言葉から任務の為なら手段を厭わない非常な人物像が想像できる。かくしてバッハマンが狙う獲物とは一体何者なのか。「世界を平和にする」と豪語しながらも、関わる全ての人間を利用していくバッハンマンの冷徹なまでの姿を追う度に、緊迫感に満ちていくスリリングな仕上がりになっている。全ての真相はぜひ劇場で確かめて欲しい。
そして、予告編のラストでは唯一無二、孤高にして当代最高の名優がスクリーンに残した主演作最後の姿に「フィリップがもういないと想うとこの映画のラストを観るのがとても辛い。」と、コービン監督も悲しみを隠せない言葉を残し、どこか寂し気なホフマンの横顔が映し出される。

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執筆者

Yasuhiro Togawa