本作は1970年代初期のロサンゼルスが舞台。人気No.1ストリッパーフランキー(ハル・ベリー)は解離性同一性障害によって生まれた、自分のもう一人の人格、アリスに日々悩まされていた。黒人女性であるフランキーに対し、アリスは白人の人種差別主義者だったのだ。フランキーが記憶をなくすたびアリスは事件を起こし、その間の記憶はない。徐々にアリスは力をつけていき、フランキーは存在を否定され、脅かされていく。サイコセラピストのオズ(ステラン・スカルスガルド)との出会いによって、この病気の元となった、これまで封印してきた過去と本当の意味で向き合い、病を乗り越えていく様を描いた奇跡の実話です。本作でハル・ベリーは一人三役を演じ分け、アカデミー賞受賞作『チョコレート』を越える演技、と世界中からの賞賛を受け、ゴールデングローブ賞主演女優賞にノミネートされました。

ハル・ベリーが、この現代版「ジキルとハイド」とも言うべき解離性同一性障害に苦しむ一人の女性の実話を初めて知ったとき、これが自分の作りたい映画だと直感し、ハリウッドで引く手数多だったこのプロジェクトを10年という長い歳月をかけて勝ち取り、自らプロデューサーも務めている。「この話はとても深いところで私の心を揺さぶったの。人種が入り混じった家庭に生まれた子供として、私は自分を重ね合わせ、このキャラクターに共感したわ。私だけに命を吹き込めるキャラクターだと思ったの」とハルは言う。

 解禁された予告編では、産後直後とは思えない美貌のハル・ベリーのセクシーなダンスシーンにまず目を奪われる。フランキーの登場シーンということにこだわり、2ヶ月間猛特訓を積んだ見事なダンスだ。そんな彼女が抱える複雑な解離性同一性障害という病気の恐ろしさ、そしていくつもの人格をその見事なまでの演技力で演じ分ける姿に圧倒される。更には、その病気を支える医師とフランキーの関係には自然と心を打たれる。病気の原因となった彼女の過去の事件とはなんなのか、非常に興味を引かれる。最後に窓の外を見ながら微笑むフランキーの姿と、そこに添えられる「私は、私に負けないー。」のコピーが、フランキーの壮絶な自分との戦いと、誠実な様子が見て取れる。自分と向き合うことの大変さと、大事さを教えてくれるこの秋必見の1本だ。

9月20日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開

予告編::http://youtu.be/-jO5bpU-iRk

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執筆者

Yasuhiro Togawa