2013年12月に香港で公開されるや3121万HKドル(※人口約800万人の香港では1000万HKドル以上の興行収入をあげるとヒットとなる)をあげ、この年の香港映画年間興行収入第8位(中華映画では第2位)の大ヒットを記録した”香港ノワール”最新作『レクイエム 最後の銃弾』(原題:掃毒The White Storm)が、10月4日(土)より東京:シネマート新宿、大阪:シネマート心斎橋ほか全国ロードショーが決定いたしました。

1986年に公開され、”香港ノワール”というジャンルを確立させたジョン・ウー監督の『男たちの挽歌』の登場以来、香港映画はジャッキー・チェンやジェット・リーのクンフー・アクションとともに、”香港ノワール”は男性アクションの人気ジャンルとして世界でも注目されました。その後も『ザ・ミッション/非情の掟』のジョニー・トー監督はヨーロッパで高い評価を受けており、またアンドリュー・ラウ監督の2001年に発表した『インファナル・アフェア』は、ハリウッドでは『ディパーテッド』として、また日本でも「ダブルフェイス」としてリメイクされるなど、内容の面白さに世界的な高い評価を受けました。

その後、香港映画は経済力著しい中国本土の資金による映画製作に飲み込まれる形で、脚本での表現の制限などもあり、思うような作品を作れずにいましたが、この作品では麻薬捜査に命を懸ける3人の警官が、タイの麻薬王との対決の中で、友情や裏切り、そして壮絶な戦いが「男気」全開で描かれ、日本でも問題となっている麻薬の描写や、タイでのオールロケによるヘリからの一斉掃射、麻薬王ブッタとその傭兵たちと主人公たちが対決する怒濤のクライマックスなど、中国本土の表現規制を木っ端みじんにして、世界に向けて発信する、まさに21世紀の『男たちの挽歌』というべき内容になっています。

近年の香港では、中国本土で製作された作品は、中国本土でヒットしても香港では人気がなく、ハリウッド映画が興行収入を席巻していますが、2013年においては、年間興行収入ベスト10の中で入った中華圏作品2本のうちの1本が本作品であり(1位は『アイアンマン3』)、中国本土作品に飽きていた香港市民にとっては、まさに待ちに待った純正”香港ノワール”映画として大ヒットしたのでした。

主演は、『奪命金』のラウ・チンワン、『ドラック・ウォー毒戦』のルイス・クー、そして『ビースト・ストーカー/証人』『激戦』(原題)で2度の香港電影金像奨を受賞したニック・チョンと、今、香港映画の主演スターとして最も熱い3人が顔を合わせ、監督は、『コネクテッド』『新少林寺SHAOLIN』など、香港映画でのアクション・エンタテインメントに定評があるベニー・チャンが手掛けています。

2014年香港電影金像奨(香港アカデミー賞)で7部門にノミネート(作品、監督、主演男優、助演女優、撮影、編集、主題歌)されました。

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執筆者

Yasuhiro Togawa