答えはこれでいいのか!? 鑑賞後に自分の答えが不安になり、思わずもう一度観たくなる映画
 マーティン・スコセッシ監督の『シャッターアイランド』のように観ている間に何が真実か分からなくなり、最後に衝撃的な答えが待ち受けている映画、ダーレン・アロノフスキー監督の大ヒット映画『ブラック・スワン』のように終始観る者を不安に誘い続ける映画、デイヴィッド・リンチ監督の『マルホランド・ドライブ』のように観る者を迷宮に誘いこむような映画・・・多くの人気・実力派監督たちが、観客が鑑賞中に答えを探してうろたえたり、不安な気持ちにかられるような名作映画を撮っている。自分の答えはこれで合っているのだろうか? 最近では、『裏切りのサーカス』のようにもう一度観て、答えを探したくなる映画もある。なぜ人は、あえて答えを求めて不安な気持ちを味わうような映画に魅せられてしまうのだろうか? 7月18日から公開となる『複製された男』もまさにそんな映画だ。

だまし絵を見るような快感!?に酔いしれる
先入観をもつと真実を見極めることができないのが“だまし絵”だ。答えが分かってもう一度見た時にだまし絵に感じる「だまされる快感」に酔いしれることができるのが、映画『複製された男』だ。主人公のアダムはある日レンタル店で借りてきたDVDに、自分と瓜二つの男が出演していることを発見する。まるでコピー人間のように自分にそっくりな男。そいつの存在を知ってからアダムの日常は悪夢に変わっていく…尋常ではいられなくなったアダムの不安な心象を表すかのように不穏な空気が映画を支配し始めると、観る者は釘付けとなり最後の最後まで物語に翻弄されてしまう。真実はひとつなのに、観る人によっていくつもの答えが見えてしまう、秀逸なだまし絵的映画にマスコミも騒然となり、監督のドゥニ・ヴィルヌーヴからはこの映画の取り扱いマニュアルも届いたほどだ!

そしてミステリー作家たちも大絶賛!?
 ネット上には『複製された男』を鑑賞した人気作家たちの声もまとめるサイトも出現し、現在16万人以上もの閲覧者を記録し、賑わいを見せている。我孫子武丸、綾辻行人、有栖川有栖、井上夢人、冲方丁、貴志祐介、朱川湊人、辻村深月、中山七里、貫井徳郎、法月綸太郎さんら第一線の作家達もそれぞれの言葉で『複製された男』の妖しい魅力に言及。もう一人の自分を描いた映画は珍しくはないのに、話題騒然となっているのはなぜ? 監督からのこの挑戦を映画ファンなら見逃すな!

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執筆者

Yasuhiro Togawa