1994年、初のアルバム『グレース』を発表し、ソロアーティストとして歩み始めた矢先、遊泳中に溺死し30歳でこの世を去った若き天才ミュージシャン、ジェフ・バックリィ。彼の狂気にも似た美しいサウンドと孤高な魂の叫びとも言うべき歌声は、ボブ・ディランやデヴィッド・ボウイら、数々の著名アーティストから賞賛され、今でも多くのファンに愛され続けている。
60年代にフォーク・ロックの伝説的ミュージシャンとして知られたティム・バックリィを父に持ちながら、ほぼ会うことがなかったジェフが、ある日、父の追悼コンサートに呼ばれる。亡き父の存在に葛藤し続けた彼は、そのステージで自らの声を発見し、その類い稀な才能で観客たちを魅了、短い音楽人生の出発点に立つのだった。
本作は、それぞれの時代にこよなく愛されたシンガーソングライターの父と息子が織り成す人生を、切なく描いた感動作です。
“天使の歌声”と賞されたジェフを演じるのは、「ゴシップガール」で一躍脚光を浴びたペン・バッジリー。魂が乗り移ったかのような圧巻のパフォーマンスで、伝説の追悼コンサートを見事に再現したクライマックスは必見です。

奇しくも6月29日は父・ティム・バックリィの命日—。

ジェフ・バックリィ (1966年11月17日 – 1997年5月29日)
94年にアルバム『グレース』を発表。アルバムに収録されたレナード・コーエンのカバー曲「Hallelujah」は、原曲を超えたカバーとして現在も語り継がれ、奇跡の名盤に位置づけられている。97年、セカンド・アルバム製作中に溺死。将来を嘱望されたアーティストの早すぎる死は、米国音楽界に起こった最大の悲劇の一つとされた。
2009年に発表された「ローリング・ストーンズ誌が選ぶ史上最も偉大なシンガー100人」で、カート・コバーン、ジム・モリソンらを抑え、第39位に選ばれている。

関連作品

http://data.cinematopics.com/?p=52764

執筆者

Yasuhiro Togawa