ベルリン国際映画祭 パノラマ部門2010
ミュンヘン・ドキュメンタリー映画祭2010
アムステルダム国際アートドキュメンタリー映画祭2010
ペサロ国際ニューシネマ映画祭2010 正式招待作品

シュミットの幻影から、日本のミニシアターブームは始まった。
彼の磁場に集まった人々、映画、そして時代の記憶。
“あまりに映画的な”人生を生きた、異色の映画作家の万華鏡的ポートレート。

80年代の日本におけるミニシアターブームの火付け役であり、当時の映画ファンにとって特別な存在だった映画監督ダニエル・シュミット。言語や国境、そして現実と虚構の境をたえずすり抜けてきたシュミットは、未知の多様な作家や作風が紹介されていった80年代のカルチャーシーンを牽引した、セゾン文化のイメージを形成するシンボルの一人でもあった。
パスカル・ホフマンとベニー・ヤーベルクという二人の若いスイスの監督によって作られた『ダニエル・シュミット−思考する猫』は、グリソン山脈にあるシュミットの生家であるベルエポックのホテルでの彼の幼少期に始まり、平和なアルプスから騒乱吹き荒れる1960年代ベルリンへの逃亡、映画への愛、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーとの出会いへと展開する。さらに1970年代パリの歓楽街、モロッコ、ポルトガル、故郷グリソン山脈での撮影の模様と足跡をなぞっていく。これは到着およびそこでの時間という繰り返しについての映画であり、旅立ち、永遠の旅立ちについての映画である。と同時に、まさに「ダニエル・シュミットの墓」と呼ぶべき愛に満ちた追悼作品です。7月12日からオーディトリウム渋谷で開催される「ダニエル・シュミット レトロスペクティブ」に引き続き19日より公開となります。

ダニエル・シュミット Daniel Schmid
1941年12月26日、スイス、グリゾン(グラウビュンデン、グリジョーニ)州フリムス=ヴァルトハウス生まれ。生家は大きな城館のホテル。高校時代に映画狂となり、またオペラやコンサートにも熱中。62年、西ベルリンのベルリン自由大学に入学。66年、ファスビンダーと知り合い、67年から69年まで映画TVアカデミーに在籍。71年、ファスビンダーとその妻カーフェンと共にタンゴ・フィルム設立。72年、生家で初長編『今宵かぎりは…』を撮り、以後、耽美的な作風の映画監督として注目される。女優イングリット・カーフェンやビュル・オジエ、映画監督ヴェルナー・シュレーター、カメラマンのレナート・ベルタ、映画研究家の蓮實重彦らと、国境を越えた親交を育む。84年の「青ひげ」以後、オペラ演出も手がける。2006年8月、生家にてガンのため死去。

7月12日(土)〜の「ダニエル・シュミット レトロスペクティブ」に引き続き、
7月19日(土)より オーディトリウム渋谷にて 待望のロードショウ!

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執筆者

Yasuhiro TogawaYasuhiro Togawa