の度、2013年のヴェネチア国際映画祭にて、ベルナルド・ベルトルッチ監督や坂本龍一など審査員から満場一致の絶賛を浴び、『風立ちぬ』を押し退けて、ドキュメンタリーとして史上初めて金獅子賞を受賞したイタリア映画「SACRO GRA(原題)」。邦題が『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』と決定し、今夏、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開することになりました。

輝かしい未来と、そこから取り残された人々ー。
今も刻まれ続ける彼らの喜び、怒り、哀しみ、そして夢

イタリアの首都ローマを囲む高速道路GRAと、その周辺部に住む愛すべき人々。GRAに沿って建てられたモダンなアパートに移り住んできた老紳士とその娘。シュロの木に住み着いた害虫たちの世界に没頭する植物学者。アパート群の中に取り残されたように建つ城の屋上で体操するヘビースモーカーの貴人。果てしなくつづく交通事故の知らせに、体の休まる暇がない救急隊員。ボートで暮らしながら、チベレ川の下でうなぎを釣る漁師。年老いたソープオペラの俳優、そして夢と名声を追う若者。彼らの暮らしと、その風景の中にイタリアの光と影が見えてくるー。

 本作はジャンフランコ・ロージ監督がイタロ・カルヴィーノの名著『見えない都市』にインスパイアされ、市井の愛すべき人々の物語を、叙情的に描いたドキュメンタリー作品です。欲望と混沌、輝かしい未来と取り残された者たちの心模様を鋭く切り取った野心作。

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執筆者

Yasuhiro Togawa