中国と日本の血を受け継いだ彼女の笑顔と人懐っこさは、周りの人を魅了する。
2009年12月のある夜、一人の女性タクシードライバーと出会った。生い立ちを尋ねると、まさに日中戦争に翻弄された人生であった。終戦後、日本人の母は残留し中国人と結婚。彼女を生む。日中の血を受け中国で育った彼女は「文化大革命」など、歴史の荒波を生き抜く。20年前にようやく帰国し日本国籍を得るのだが、その生活は家庭の崩壊など、決して平穏なものではなかった。彼女の目を通し、日中の歴史と未来のあり様を探ると共に、8割の日本人が「中国に親しみ感じない」という現況の改善の助けになればと願うのである。

山田静59歳。お金がなくても、家族・子供がいっしょにいれば幸せ。
来日して20年になる、残留邦人二世の彼女の幸せのかたち。

東京は葛飾区、亀有駅のタクシー乗り場。男性ばかりの同僚に混じり、決して流暢と言えない日本語で不景気を嘆く一人の女性ドライバーがいる。山田静さん59歳。彼女は、母の祖国・日本へ来て22年目を迎えた中国残留邦人の二世だ。中国で二度、日本で一度の離婚を経て、異父兄妹4人の子を女手一つで育て上げた。誰に対しても物怖じせず、自身の主張は通す。弱音は吐かず、誰の手助けも借りたくない。そんな彼女の肝っ玉ぶりも、決して生まれながらに具わっていたわけではない。むしろ幼少時代は引っ込み思案で大人しい性格だったらしい。では、何が彼女をそうさせたのか?
日本に来てからは忙しく、病気する暇もなかったという彼女が腎臓を患い手術をした。
その際「長く大連の、母の墓を訪ねていないため、母が怒ったのでは」と思うのだった。彼女は二人の子を連れ中国に里帰りをする。
カメラもその里帰りに同行し、彼女の肝っ玉おっ母たるルーツを、彼女の半生を追い求める旅に出た。

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執筆者

Yasuhiro Togawa