5年の歳月をかけて撮った“毎日”。
名匠マイケル・ウィンターボトムの原点回帰
一つの家族を通して普遍的な愛と時間の尊さを描く、珠玉の感動作。

ステファニー、ロバート、ショーン、カトリーナの兄妹は、毎朝シリアルを食べ、学校へ通い、母カレンはみんなを学校へ送った後にスーパーで働き、夜はパブでも仕事をする。どこにでもある毎日。でも、違うのは父親がいないこと。
時々夜も明けきらない頃に眠い目をこすりながら母カレンと一緒に、ノーフォークの小さな村にある家からバスと電車を乗り継いで長い旅をする。連れて行かれるのは、父親が服役している刑務所だ。会えるのはほんのわずかな面会時間だけ…。
本作『いとしきエブリデイ』は、父親不在のある家族の日々を通して、当たり前と思っている“愛”と“時間”の尊さを、美しい映像と音楽で描き出した珠玉の感動作。少数のスタッフと5年の歳月をかけ、12年ぶりにマイケル・ナイマンとタッグを組んで誕生したマイケル・ウィンターボトム監督渾身の作品だ。
ウィンターボトム監督は、トマス・ハーディ原作の『日蔭のふたり』(96)、難民問題を扱い第53回ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞した『イン・ディス・ワールド』(02)など感動作からサスペンスまで、ジャンルの全く違う作品を次々に手がけ国際的にも高い評価を得てきた。なかでも多くの人を魅了したのが、䜂かり輝くロンドンの街を舞台に、そこに生きる人々を優しく包み込むような視点で描いたヒューマンドラマ『䜂かりのまち』(99)。ドキュメンタリー出身のウィンターボトム監督の手腕がいかんなく発揮され、ドキュメンタリーとフィクションの境界を自在に行き来してみせた。『䜂かりのまち』と対を成す作品と監督自身が言う本作でもまた、優しく穏やかなまなざしでそこに流れる家族の時間を丁寧にみつめていく。『いとしきエブリデイ』は、父親が出所してくるまでの5年間の日々のディテールを辛抱強く積み上げていくことによって、誰もが当たり前と思っている時間、家族、人間関係など、日々見落としがちな大切なことを浮か䜃上がらせていくことに成功している。

予告編::http://youtu.be/NlyIqnTVKsQ

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執筆者

Yasuhiro Togawa