昨年10月17日、急逝した映画監督・若松孝二。
彼の新盆と終戦(敗戦)記念日に合わせ、彼が終始訴えていた「反戦」がテーマの2作品を特別上映します。

一本は、『キャタピラー』。もう一本は1964年の作品、『恐るべき遺産 裸の影』。
前者は、寺島しのぶがベルリンで主演賞を受賞した、若松晩年の代表作であり大ヒット作。後者は、原爆症に悩む女子高生を扱った社会派作品ながら、劇中に登場する女子高生の入浴シーンが大スキャンダルとなったという、いかにも若松監督らしいエピソードを持つ作品。デジタル化作業が修了し、ようやく一般公開が可能になりました。
今年の夏だからこそ見るべき2作品。お見逃しなく!

〔作品情報〕
『恐るべき遺産 裸の影』 (1964年/84分)
監督:若松孝二
出演:三浦光子、花ノ本寿、榊原扶美子、岡山紀子、渡部愛子 ほか

バレー部のレギュラーとして活躍する明るい性格の少女:のりこ。誕生日に、両親から本当の母の遺品である指輪をプレゼントされる。実はのりこの父はヒロシマの原爆で即死、母は被爆し、のりこを出産してすぐに死んでしまったのである。
戸惑うのりこを突然、経験したことないめまいが襲い・・・
後遺症によってバレー部合宿でみんなと入浴できない主人公を描くため、30人の少女を裸にしたことが児童福祉法違反の疑いありと非難されたらしいが、全く気になるものではなく、土門拳の写真集の使用や、原爆ドーム内の描写等、映画全体に若松監督のヒロシマに対する純粋な誠意を感じる作品である。また家族シーンの会話など、「監督、こういうのも撮っていたんですね」と話しかけたくなる作品でもある。
※本作は、現存する最後のフィルムからデジタル化したものです。フィルムが傷んでいたため映像・音声が乱れている箇所がございますがご了承ください。

『キャタピラー』 (2010年/87分/若松プロダクション)
2010年ベルリン国際映画祭最優秀女優賞受賞
監督:若松孝二 脚本:黒沢久子、出口出 製作:尾崎宗子
出演:寺島しのぶ、大西信満、粕谷佳五、井浦新(ARATA)、地曵豪 ほか

1943年、世界各地で戦局が激化して行く中、黒川久蔵(大西信満)は四股を失い、変わり果てた姿となって妻・シゲ子(寺島しのぶ)の元へ送り返されてきた。日の丸を背負い、勇ましいバンザイのかけ声とともに戦地へと送り出されたかつての軍人は、「生ける軍神」として立派な勲章を胸に付け、村中から讃えられるが、その耳はもう何も聞かず、その口は言葉を失い、ただひたすら、毎日、妻が口に流し込んでくれる粥を食べ、シモの世話を妻の手に委ねていた。
全編を貫くのは、若松孝二の叫びである。「正義のための戦争が、どこにあるのか!」戦争とは、人間が人間に、犯され、切り刻まれ、焼かれることだ。忘れるな、これが戦争だ、と。

〔上映日程&料金〕
8/15(木)〜8/30(金)・・・・・・13:00/16:20 『恐るべき遺産 裸の影』 14:40 『キャタピラー』
8/31(土)〜終了日未定・・・13:00 『恐るべき遺産 裸の影』
当日一般 1作品 1,000円 2作品 1,500円 / 高校生以下 1作品 500円 2作品 1,000円

〔劇場情報〕
下北沢トリウッド 〒155-0032 東京都世田谷区代沢5-32-5-2F (受付:営業時間内 火曜日定休)

<ポレポレ東中野にて特別イベント開催決定! 「若松孝二と時代の表現者たち〜追悼を超えて Vol.3」>
8/16(金) 19時より ゲスト:塚本晋也監督
上映作品:『恐るべき遺産 裸の影』  料金:1,500円均一
場所:ポレポレ東中野 〒164-0003 東京都中野区東中野4−4−1 ポレポレ坐ビル地下

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執筆者

Yasuhiro TogawaYasuhiro Togawa