日本にあるアメリカ軍基地・専用施設の 74%が密集する沖縄。
5 年前、死亡事故が多発する新型輸送機オスプレイの着陸帯建設に抗議し座り込んだ東村・高江の住民を国は「通行妨害」で訴えた。反対運動を委縮させる SLAPP 裁判だ[※1]。人口 160 人の高江集落は米軍のジャングル訓練場に囲まれている。わがもの顔で飛び回り、低空で旋回する米軍のヘリ。自分たちは「標的」なのかと憤る住民たちに、かつてベトナム戦争時に造られたベトナム村[※2]の記憶がよみがえる。

2012 年 6 月 26 日、沖縄県議会がオスプレイ配備計画の撤回を求める抗議決議・意見書を全会一致で可決した。
9 月 9 日の県民大会には 10 万の人々が結集した。しかし、その直後、日本政府は電話一本で県に「オスプレイ」配備を通達した。そして、ついに沖縄の怒りが爆発した。
9 月 29 日、強硬配備前夜。台風 17 号の暴風の中、人々はアメリカ軍普天間基地ゲート前に座り込み、22時間にわたってこれを完全封鎖したのだ。4 つのゲートの前に身を投げ出し、車を並べ、バリケードを張る人々。真っ先に座り込んだのは、あの沖縄戦や復帰前のアメリカ軍統治の苦しみを知る老人たちだった。強制排除に乗り出した警察との激しい衝突。取材に駆け付けたジャーナリストや弁護士さえもが排除されていく。そんな日本人同士の争いを見下ろす若い米兵たち……。

この全国ニュースからほぼ黙殺された前代未聞の出来事の一部始終を記録していたのは、地元テレビ局・琉球朝日放送の報道クルーたちだった。本作は、反対運動を続ける住民たちに寄り添いながら、沖縄の抵抗の歴史をひもといていく。復帰後 40 年経ってなお切りひろげられる沖縄の傷。沖縄の人々は一体誰と戦っているのか。奪われた土地と海と空と引き換えに、「平和と安全」を味わうのは誰か?

10 月 1 日、午前 11 時 20 分。沖縄の空をオスプレイが飛んだ。抵抗むなしく、絶望する大人たちの傍らで11 才の少女が言う。「お父さんとお母さんが頑張れなくなったら、私が引き継いでいく。私は高江をあきらめない」。

※1=SLAPP 裁判……国策に反対する住民を国が訴える。力のある団体が声を上げた個人を訴える弾圧・恫喝目的の裁判をアメリカでは SLAPP(Strategic Lawsuit Against Public Participation)裁判と呼び、多くの州で禁じられている。

※2=ベトナム村……1960 年代、ベトナム戦を想定して沖縄の演習場内に造られた村。ベトナム戦を想定し農村に潜むゲリラ兵士を見つけ出して確保する襲撃訓練が行われていた。そこで高江の住民がたびたび南ベトナム人の役をさせられていた。

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執筆者

Yasuhiro Togawa