この映画は、クエインティン・タランティーノ、モンテ・ヘルマン、ガス・ヴァン・サント、イーサン・コーエンなどアメリカのインディペンデント映画を牽引する監督たちから様々な支援、協力を得ながら総製作費25,000ドル(250万円)で作り上げられた。カート・ヴォス自身がハンディカムで撮影を担当し、アリソン・アンダースの子供たちがBカメラと音楽の統括を担うなど徹底した低予算での映画作りがなされている。
劇中に登場する役者たちは両監督の友人たちで、映画撮影時は実際にバンド活動を行っていたのだという(残念ながら撮影後に解散)。本作にドキュメンタリー映画のような肌触りがあるのはきっとそのせいだろう。また、ブレットが働く楽器店の店主役に80年代に活躍した伝説のL.A.パンクバンド、ガン・クラブのドラマー、テリー・グレアム、中古レコード店のお客として L.A.ミュージック・シーンの異端児アリエル・ピンクが出演しているのもロックファンとしては見逃せないポイントだ。劇中を彩る音楽も最高で、ガレージ・ロックやグラム・パーソンズの奏でるカントリー、ダイナソーJr.のJ・マスシスによるスコア(マスシスは何とカメオ出演までしている!)など、L.A.ロックシーンの過去と現在(いま)が体感できるものになっている。また、一人の青年の成長を描いたビター&スイートな青春ストーリーでもある本作のツボを押さえた展開は、映画ファンをニヤリとさせること必至だ。この夏、映画界と音楽シーンを揺るがすアメリカン・ロック・ムービーの傑作をぜひその目で!

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執筆者

Yasuhiro Togawa