映画『ソレイユのこどもたち』忘れられた東京の片隅で暮らす—−−この街を彷徨う誰にも、それぞれの物語がある
ソレイユと共に暮らす老人と犬の物語
多摩川の河口、捨てられた船で暮らす一人の老人
犬を傍らに、時折カメラに向かって話しかける
いつしかカメラは、彼の「物語」を紡ぎ始める−——
東京・多摩川の東京湾に流れ出る河口、モーターボートの修理をしながら、捨てられた船で暮らす一人の老人がいた。いつも犬を傍らに、川岸で近所に住む人達と語らっていた。老人はその犬をソレイユと呼んでいた。ソレイユとはフランス語で太陽。ソレイユを家族のように慈しむ老人の姿を映し出すカメラ。その老人は時折カメラに向かって話しかけるようになっていく。そして東京の片隅に暮らす老人と犬たちを見つめるまなざしは、いつしか、忘れられた東京という街の記憶とも重なっていくのだった。
忘れられた東京の片隅で暮らす—−−
この街を彷徨う誰にも、それぞれの物語がある
2012年に劇場公開され注目された『ニッポンの、みせものやさん』の奥谷洋一郎監督が新たに紡ぐ、ドキュメンタリー・トウキョウ。山形国際ドキュメンタリー映画祭2011のアジア千波万波部門に出品され特別賞を受賞したものに、整音と新たな音響効果をほどこし、さらに完成度を高めた。ドキュメンタリー映画作家、故佐藤真が遺した企画ドキュメンタリー「トウキョウ」の一編として構想された本作。東京という大都会の傍らで、消えゆく人々と風景を静謐に描き出す。
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執筆者
Yasuhiro Togawa