『木靴の樹』『ポー川のひかり』などの名作で知られるイタリアの巨匠エルマンノ・オルミ監督の最新作です。かつてオルミ監督は、『ポー川のひかり』(06)を自身の映画人生における最後の劇映画と語りました。しかし5年後、前言を翻して、現代の黙示録ともいうべき本作『楽園からの旅人』を発表。世界の状況が一層混迷するなか、この作品をとおして、よりよい社会への思いを改めて示さずにはいられなかったのです。

「世界を温もりのあるものに戻す」という彼の人間性への信頼は失われることはなく、不安に満ちた現代社会のなかで、旅人たちの神々しさを示し、すべては破局の中から新しく始まり、未来は私たちが築くものと語る『楽園からの旅人』は、まさに希望の映画です。また、オルミ監督は今日におけるキリスト教の意味を、これまでも誠実に問い続けてきました。本作はその集大成ともいえます。前作と同様にキリストを彷彿とさせる人物が登場し、聖書の挿話も織りこまれ、イスラム教との対話と共存も暗示しています。

予告編::http://youtu.be/jnkmdqrlBnQ

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執筆者

Yasuhiro Togawa