『選挙』で鮮烈なデビューを果たし、『精神』『Peace』『演劇 1・2』など、次々に「観察映画」の傑作を繰り出してきた想田和弘監督。最新作『選挙2』の公開初日が 7 月 6 日(土)に決まりました。

選挙費用総額8万4720円。スローガンは脱原発。「普通の主夫」山さんが、怒りの再出馬!
舞台は2011年4月の川崎市議会選挙。震災で実施が危ぶまれた、あの統一地方選挙だ。

『選挙』(07年)の主人公「山さん」こと山内和彦が、完全無所属で出馬した。スローガンは「脱原発」。
自粛ムードと原発「安全」報道の中、候補者たちは原発問題を積極的に取り上げようとしない。小さな息子のいる山さんはその状況に怒りを感じ、急遽、立候補を決意した。かつて小泉自民党の組織力と徹底的なドブ板戦で初当選した山さん。しかし今度は違う。組織なし、カネなし、看板なし。準備もなし。選挙カーや事務所を使わず、タスキや握手も封印する豹変ぶり。ないないづくしの山さんに、果たして勝ち目は?

監督はもちろん、『選挙』『精神』『演劇1・2』の想田和弘。
そのカメラに映ったのは、放射能に怯えながらも機械的に営まれる日本的日常。祖国の大ピンチに際しても政策論争が起きず、相も変わらず繰り広げられるお馴染みの選挙風景。山さんが丸腰で挑む選挙戦から浮き彫りになるのは、ニッポンの民主主義の姿だ。『選挙』では第三者然としていた想田。しかし本作では撮る者と撮られる者の摩擦が高まるにつれ、その「状況」に巻き込まれていく。選挙イヤーの日本。
「わたしたち」は、いったいどこへ行こうとしているのか? 再び世界に問いかける!

何よりも主人公(というのかしら)“山さん”の変貌ぶりに驚いた。
彼はほんとうに怒っている。
原発事故のあとの日本の政治全体に対して。
この怒りはまっとうなものだと私は思う。
そのまっとうさに正面から向き合わない人々の姿をカメラはそのまま、剥き出しに、映し出している。
内田樹(凱風館館長)

現代日本の記録者、想田和弘。彼がふたたびニッポンの「選挙」を撮った。
奇妙でシュール、魑魅魍魎が跋扈する。これって現実?これが現実。
笑えないのに、笑えちゃう。ああ、ヘンなニッポンの「選挙」!
大野更紗(作家・大学院生)

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執筆者

Yasuhiro Togawa