第 62 回カンヌ国際映画祭には、ひとつサプライズがありました。下馬評で圧倒的な支持を得ていたミヒャエル・ハネケ(『白いリボン』)を差し置いて、フィリピン人のブリランテ・メンドーサが監督賞を受賞したのです!フィリピン人監督として初めて同賞を受賞した彼の最新作『囚われ人』を、7 月 6 日(土)よりシネマート新宿を皮切りに全国順次公開致します。

『囚われ人』は、2001年5月にフィリピンで実際に起きたイスラム系過激派“アブ・サヤフ”による身代金目的の観光客誘拐事件を題材に製作されました。「12 年の時を経た今も未解決であるこの事件を映画化するということは、ある種のタブーを犯すようなものだった」と監督本人も述べるように、こうした“誘拐ビジネス”は、フィリピンにとって今も大きな社会的問題であり続けています。フィリピンでは、1986 年に当時三井物産マニラ支店長であった故・若王子さんが身代金目的で誘拐され、事件発生から24年経った 2010年に容疑者が逮捕されました。我々日本人にとっても、無関係な出来事ではありません。本作では、テロリストに誘拐され、377 日間、海やジャングルを連れ回された NPO 職員を、フランスが誇る大女優イザベル・ユペールが体当たりで演じ切り、彼女の目を通してその脅威の事実が明かされていきます。

先日のボストンでの爆弾テロ事件の犯人は拘束されましたが、その背景の解明はこれからであり、テロの連鎖の
終焉は全く見えません。これから私たちがこうしたテロリストたちへの対応をどのようにしていけばいいのか考えさせられる機会となる作品です。どうぞ皆様の目でお確かめください。

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執筆者

Yasuhiro Togawa