1984年に実際に起きた海難事故を描いた壮絶なヒューマンドラマ『ザ・ディープ』。トロント国際映画祭2012スペシャルプレゼンテーション部門出品のほか、数々の映画祭にて大絶賛され、第13回アイスランド・アカデミー賞Edda賞では主要部門を網羅し、最多となる11部門で受賞。授賞式の様子は視聴率驚異の60%越えで、「この作品以外には受賞はあり得ない」などの意見も多数寄せられ、国民の間で納得のいく結果となった。そして本年度アカデミー賞外国語映画賞のアイルランド代表作となり、並み居る強豪の中、最終選考9作品に選出された。

本作の監督を務めたバルタザール・コルマウクルは、これまで3回もアイスランド国代表作になっており、今回で4度目のアカデミー賞外国語映画賞ノミネートとなる、アイスランドを代表する監督。本作の成功がハリウッドから注目されるきっかけとなり、『ザ・ファイター』『テッド』のマーク・ウォールバーグ主演によるアクション映画『ハード・ラッシュ』(6月15日より公開)や、デンゼル・ワシントン主演作で今年の夏に全米公開を予定している『2GUNS』(原題)の監督を務め、クリスチャン・ベールの出演が予定されている、1996年に日本人女性を含む多数の犠牲者を出したエベレスト遭難事故を描いた作品や、『ワイルド・スピード』シリーズ第7弾の監督候補として噂されるなど、今ハリウッドが最も注目している監督の一人。

1984年3月、アイスランド沖数マイルの海上で、思わぬアクシデントで漁船が沈み、漁師たちが極寒の北海に投げ出される。寒さで意識を失い一人ずつ海の中へ沈んでいく中、若手漁師グリは必死に耐え、奇跡的にも5時間にわたって漂流する。
夜が明け、ようやくたどり着いた先は、恐るべき溶岩流の上であった。身も心もぼろぼろになりながら、一日かけて町へ帰ってきたグリ。しかし、生き残った彼にはもっと過酷な試練が待っていたー。

実在した事件の緊迫感を見事に再現し、観る者を惹きつける映像だけでなく、人間という生き物の奥深さを考えさせられる作品に仕上がっており、そのハリウッドがその才能を認めた監督の出世作を是非劇場で体感してほしい。

『ザ・ディープ』は5月11日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷にて公開。http://www.earthstar.jp/movie/deep.html

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執筆者

Yasuhiro Togawa